第54章 original~反実仮想篇~
背中をおされながら喜助さんに部屋に入れられた。なにぶん何もすることがないので布団に入って静かに目を閉じた。
なぜ、私たちを使わないの?
もっと強く思ってください
俺たちの声を聞け
わたくしは貴女様をお守りする存在
わちきは主様の魂そのもの
……僕のことなんか 忘れたんだよね
夢の中で囁いてくる声。気づけば右手をぎゅっと握りしめていた。
何かが足りない。それを思い出せず焦りが募る。
思い出さなきゃダメなのに。
寂しくて寂しくて仕方ない気持ちが溢れてきた。
もどかしくて思わず外に飛び出した。
何かを忘れてる。何かがおかしい。
狂ったように駆け出した。
門番も驚いたことだろう。何も言わず私を外に出した。
裸足で坂道を登る。
我が家の前まで来て、ゆっくり戸を開けた。
何を忘れてるのか、その破片が欲しくて昔のものを引っ張り出す。違う、これじゃない。私の欲してるものはこれじゃない。
何を失ったのかと泣き崩れる。
散らかった部屋の真ん中で、散乱した思い出の品々を眺める。
これもあれも、全て私の大切なものなのに散らかしてしまった罪悪感で溢れる。
その瞬間、意識がぽつりと途切れた。