第54章 original~反実仮想篇~
五番隊隊舎を出たのは昼過ぎだった。
「僕、少し寄らなければならないところがあるんッスよ。」
「じゃあ私はこのまま帰るわ。」
「人通りの多い所を通ってくださいね。」
「わかってる、わかってる。」
ベートーヴェン ピアノソナタ『悲愴』を口ずさんで早歩きで道を行く。店のおじちゃんや教え子の死神に「上機嫌だな!」なんて声をかけられたらにこやかに返した。
ハミングする曲とは対局な気分にいて、浮かれてるようだ。まだ記憶の正体がわからなくてもそれでも今はどこか安心していた。
そこで、十二番隊隊舎ではなく家に帰って服などいりようなものを持ってくることにした。
喜助さんたちが過保護なだけで、一人行動したってそう襲われることは無いだろう。私が狙われてると決まったわけではないのだから。
いつの間にか レオ・ドリーブ コッペリアよりマズルカを歌いながらスキップしていた。
「ちゃんちゃっちゃー ちゃららんちゃらちゃんちゃんちゃ ちゃららー」
門を抜けて私道へ向かう。
「ちゃーんちゃ、ちゃーららんちゃーちゃららんらん♪ちゃんちゃちゃちゃららん〜」
この曲スキップしにくいな。三拍子だからか?二拍目がアクセントだからか?
次はなんの曲にしようかと考えながら坂道を行くと、我が家が見えてきた。
さて、数週間ぶりの我が家に向かって走って行く最中、カサカサと木が揺れる音がした。
私が帰らない為、隠密機動による警護は暫く無くなっているはずだが、四楓院家の土地として警護しているのか。お勤めご苦労様です。
が、しかしその木の上の人間は私の目の前に降り立ったのだった。
顔を面で隠した死神。二番隊の隊員でも、隠密機動でもないことは殺気で明白だ。
「うそ……」
何よりも、私1人になった瞬間に襲われるなんて。しかもよりによって瀞霊廷の外。髪飾りも無い。
天挺空羅で喜助さんを呼ぶにしても、来てくれるまで時間がかかる。
カサカサと草をかき分けてやってきたのは、4名の死神だ。彼らは自身の斬魄刀を握って刃先を私に向けた。
「丸腰の善良な市民に向かって5人がかりで抜刀はひどいんじゃなくて?」
そう言うと男が斬りかかってきた。
「ひぃ!」
情けない声を上げて、それを交わし山の奥へ向かった。
本当は瀞霊廷へと向かいたいけど、男たちがそれを許さなかった。
「なんで私ばっかり!!!!」
