第54章 original~反実仮想篇~
真央霊術院付属図書館から出てきたのは藍染副隊長だった。
「忘れましたか。僕のこと。」
そう言いながら、腕章を見せた。
「藍染、」
「覚えてくださっていて光栄です。」
はっと、気が付き副隊長、と付け加えた。
そう言うと、お気になさらず、と言って優しく微笑んだ。何も警戒する理由なんてない。人当たりの良い、爽やかな青年である。けれども、心肝から込み上げてくるふつふつとしたものはなにか。全身の皮膚が針で刺されたような感覚はなにか。全身が粟立ち、筋肉が硬直している。この感覚は間違いなく目の前にいる男に対しての警告である。
何度か出会ったことがあるはずだけど、こんなことは一度もなかった。何故こんなことになってるのか理解できない。警告であるが、逃げろというものではない。むしろ……
「どうかされましたか?」
声をかけられてあぁ、と声をもらす。
「顔色が悪いですよ。気分がすぐれないのでしたら、綜合救護詰所まで案内しましょうか。」
そう言って手を差し伸べてきた。
「い、いいえ。大丈夫です。」
浅くなった呼吸を整える。
「そう……ですか。心配ですので門までお送りしますよ。」
「よ、寄るところがありますので、」
「十二番隊隊舎ですか?」
「……」
「浦原隊長なら、先程命が下り、部下の方と調査任務に出ましたよ。」
「あ、いえ。十二番隊隊舎ではなくて、えと、」
誰のところに行けば彼を巻けるかと考える。とにかく彼とは一緒にいてはいけないと魂の叫びが聞こえてくる。
「四楓院隊長は一族会議のため、今日は非番でしたね。あ、もしかして。平子隊長でしょうか。」
「……そうです。平子隊長はお手隙ですか。」
そうだ、彼はきっと何を言っても送ると言うだろう。だったら、彼の行く所、すなわち五番隊へ行き平子隊長に傍にいてもらおう。
「そうですね。貴女が来たと言えばきっと飛んで出ていくでしょう。そうなれば、向かう先は一緒ですね。」
彼は微笑んで、歩いていく。強ばった足を動かして数歩後ろを歩いた。