第54章 original~反実仮想篇~
翌日。
授業終わりに瀞霊廷で買い物をしていると、袖を引っ張られた。
「久しぶりやなぁ。」
そこには小さな銀髪の少年、ギンがいた。
「えっ、ギン隊……ちょ?」
「ん?なんて?体調?」
そこにいる小さな彼の存在がとても大きいものに思えた。懐かしく寂しく様々な想いが交差する。
「ちょ、なんで泣くん。ボクが泣かせたみたいやん。」
「わかんない、貴方に会えたのが嬉しくて……」
「面白いこと言いはるなぁ。別にそんな久しぶりでもないやろ。熱烈すぎるわ〜。」
彼に手を引かれて木陰に行った。
「なんか辛いことでもあったん?」
「そういう訳じゃないの。驚かせてごめんね。」
「変なの。」
私の顔を覗き込む少年の顔は幼い。
「ボクで良ければ話聞くで?」
あどけなさを残す彼に微笑まれると、言葉がポロポロと零れ落ちる。
「……三日前から違和感があるの。」
「というと?」
「その違和感の正体はわかんないのよね。モヤのように掴めなくて。」
違和感の例を挙げて彼に説明してみた。
「疲れかなぁと思うんだけど。」
「記憶が曖昧になった代わりに別の記憶があるってこと?その記憶もまた曖昧とは難儀やな。」
「あんまりおおきな声で言えないんだけど、昨日黒棺を詠唱破棄したの。」
「ひぇ、あれって九十番ちゃうの?」
「ええそうよ。そうなの。飛龍撃賊震天雷砲はできてたよ。でもね、黒棺の詠唱破棄ができるとは思ってなかったのよ。でも、何故かできる確信があった。なんだったら、今なら九十一番も、何も犠牲にしたくないけど九十六と、本気出せば九十九もできる。試したいくらいよ。あと、何か忘れてるのよね。絶対。死神という言葉を聞くたびに魂が震えるの。おかしな話だけど、自分が死神である気分なんだよね。ほら、変でしょ。前まで……あ、その記憶が曖昧なんだけど、前まではそんな感じじゃなかったのに。」
「そこまでなんかおかしいんなら、いつもと違うことしてみたら?」
「というと?」
「その"オムライス"を食べてみるとか。違和感の正体に近づいてみたら、なんか思い出せるんちゃう?」
「ケチャップがなぁ……スマホがあれば作り方調べ……ほら、こういう感覚よ。スマホなんてものここに無いのに。」