
第54章 original~反実仮想篇~

「ここの的じゃ壊れちゃうんです。どうしたらいいものか。」
ふむふむ唸っていれば、近くに平子さんの霊圧を感じた。恐らくは生徒を見に来たんだろう。
「平子さーーーん」
声を上げてみると、演習場に顔を見せた。突然の隊長登場に、皆がざわつき、背筋を伸ばす。
「さーーーんってなんや、さーーん、て。」
「やっぱり、平子隊長じゃないですか。ちょっとお願いあるんです。」
「授業中ちゃうんか?」
「授業の為です。彼女が私の鬼道を見たいそうです。」
「それなら、あの的に撃てばえてやろ。」
「壊れますもん。彼女の所望する鬼道だと、的は宛になりません。」
「俺を的にする気か?」
「ええ、まぁ。」
「はぁ?そんな至極当然のような目して。」
「攻撃を当てたいわけではないんで、受け流すなりなんなりしてくださいよ。」
「断空で構わんのか?」
「断空効くかなぁ。隊長のだったら効くか?」
「はぁ!?!?なにするつもりやねん!断空効かんのならあかん。」
「ちぇっ」
「ちぇって……別に的当てるような鬼道じゃなくてもかまへんやろ。縛道にしとき、縛道に。」
「えっ、平子隊長縛られたいんですか……?」
「アホ!なんで俺が的になんねん!」
テンポ良い私たちの会話に生徒は呆気にとられたようだ。
「そうですよね、平子隊長の霊力が必要以上に上がったとなれば、ざわつくかもしれませんものね。お騒がせするのは申し訳ないので、構いません。それに、的の必要が無いものを思い出しました。」
よーーし、とみんなを遠ざけつつ、生徒に廃棄するために置いていたいくつものドラム缶を持ってこさせた。
「本気でやったらここごと包んじゃうから詠唱破棄で力抜いてもいい?それがちゃんとしたものだったかを平子隊長に判断してもらう。それで君の基準に達成したら信用してくれるかな。」
「ええ、まぁ。はい。」
すうっ、と息を吸う。
「破道の九十 黒棺」
音を立てて黒い壁が地面からメリメリと現れ、ドラム缶を囲んで直方体に成る。内部では巨大な霊力の重力の流れで渦巻いているのだろう、鉄の擦りつけられる音が聞こえてくる。
「なんだこの霊圧……」
虎徹さんや他の生徒が膝をついている。
「あっ、やば。流石に怒られるかな……」
黒い壁が消え去った後には、鉄くずさえもなかった。
「ご、ごめん……みんな、手加減したんだけど……ごめん、苦しくない?」
