第54章 original~反実仮想篇~
身なりを整える。その時に気がついたのだが、簪が無い。いつも置いてる場所に無いのだ。焦る気持ちを抑えつつ、最後に見た場所を思い出……せたら苦労しない。
昨日のこと一昨日のことがモヤのようで思い出せない。
疲れてるのだろうか。今日は気分転換でもするか、とりあえず腹ごしらえだ、と食材を確認する。
今の気分は洋食。お昼だからオムライスにしようか。と思っても、ケチャップが無い。というか、オムライスなんていつ食べたか?
もう一度部屋を見渡す。
家電、調理器具、コンピュータ、私の知っているものがない。
昨日一昨日の記憶と引き換えに違う記憶がある。
不思議な感覚だけれども、まだそれが危機的なものであるかは判断できない。誰かに相談するのがいいのだろうけれど、今日は学校を休ませてもらってるし、瀞霊廷には行けない。早急に何とかすべきかもわからないから、何かあるまでは気にしないでおこう。
とりあえず腹ごしらえしたいが、食べたいオムライスにはケチャップが必要で、ケチャップはこの家にも外にも無い。作り方はわからない。仕方がないので、昨日炊いていたのであろうお米をお雑炊にして食べた。
食後、片付けてから改めて部屋の中を見渡すと、写真が目に入った。喜助さんが隊長になって初めて開催したお花見の写真。これをみていると、アルバムを見返したくなった。
本棚の奥から幾つかアルバムを開いてみる。
喜助さんがまだ死神になるまえに、夜一さんのところでおめかししてもらって撮った写真。
喜助さんの誕生日会の写真。
夜一さんの所有する湖で水遊びをする私。
羽子板で負けた喜助さんの顔に墨で落書きした写真。
喜助さんが初めて死覇装に袖を通した写真。
見ていると頬が緩んだ。
無邪気に遊んでいたあの頃を懐かしみ、慈しみ、思いを馳せる。躓いても手を差し伸べて微笑む彼がいる。それがどんなに幸せなことかと噛み締めた。私と出会った瞬間からずっと私の兄となり、今日まで守り続けてくれていたのだ。この日々が永く続くようにと願いをかける。
「どうしちゃったんスか〜?古い写真なんか見て。」
気配を消して後ろから覗いていたのは喜助さんだ。