第53章 original~魂葬篇~
「抱いてもいいんですよ?」
「……」
女性は寝ている子どもに寄り添うように転がり、その胸に抱いた。
「ま、ま?」
「えっ?」
「おかえり、ママ」
目に涙がたまる。これはなかなか……
ぎゅっと唇を噛み締めた。
「うん……ごめんね、修ちゃん、ママね、遠くに行かなきゃいけないの。」
「お空に行くってばあばがいってた。」
「そう、お空に行くの。」
「どうして?」
「ママね、お空に行くけど、ずっと修ちゃんのこと見守ってるよ。修ちゃんのこと忘れないからね。これから辛いことがあったら、すぐに修ちゃんのところに、行くからね。幸せなってね、愛してるよ。」
紡ぎだされる言葉は、愛のこもったもので、こんなことにならなければこの家庭は温かく、幸せに満ちたものなのだろうと想像することは容易い。
なぜこの人が死ななければならないのかと、世を恨んでしまう。
「お空に行っても、修ちゃんはママのこと忘れないよ。ママのこと、だいすきだよ。修ちゃん、良い子にしてるよ。修ちゃん、大きくなったら警察官になるんだよ、それでね、ママをね、パトカーに乗せてあげるね。」
「うん……うん、楽しみだなぁ、、」
優しく我が子を撫でる。その顔はもう涙で濡れていた。
「ママ、泣かないで、修ちゃんは大丈夫だからね。」
声にならない声で女性はずっと泣いている。
私も零れ落ちるものが止められない。
「修……ごはんだぞ〜起きようか」
部屋に入ってきたお父さんは修ちゃんを抱き上げた。
彼らについて歩いている。
「パパ、いただきますは?」
「そうだな、いただきます。」
修ちゃんの独り言に相槌をうつも、お父さんは心ここに在らずだ。
「まったく!修ちゃんの方がしっかりしてるわ!」
泣き笑い、彼女は修ちゃんの隣の椅子に座った。
「これいや!」
修ちゃんが人参を皿から出して机に置いた。
「あ〜ぁ、もうやっちゃった……」
「修、人参たべれるだろ?」
「んんや!」
「えぇ……」
そう言ってお父さんは机に置かれた人参を食べてしまう。
「なんであんたが食べるのよ!まったく……人参はね、一口のサイコロの形なら食べるの。きゅうりも一口の半分サイズ。輪切りは食べないのよ。そうだ、書かなきゃいけないこと思い出したー!」