第52章 original~空座町怪死事件篇~
「……ごめん、変なこと聞いて。」
私はタオルで顔を隠して立ち上がった。
「アタシは、今しか見れない貴女が好きです。」
「え?」
「前にも言いましたよね。また貴女が成長していくのをみていける。それが嬉しい。貴女は不満かもしれませんが、今を大切にしてください。アタシとの時間は後からでもたくさんとれますから。」
「……わかった。」
"後から"それは嫌いな言葉だ。
当たり前を当たり前と思ってはいけない。いつ日常が奪われてもおかしくない。だからこそ、私は喜助さんともっと近くにいたい。
でも、彼が言わんとすることはわかる。
私には私の生がある。
それを疎かにすることは、まさに日常を後回しにすることだ。わかってるのにすぐ受け入れられないのはやはり心の発達が途中だからだろう。
今すべきことを成して、喜助さんの隣にいても恥ずかしくない女にならなきゃ。
静かに電気を消して、蓙の上に寝転んだ。