第52章 original~空座町怪死事件篇~
「今は難しくても、肝に銘じていてください。」
顔色を伺ってはいけない……か。
私の表情が晴れないのを見たためか、喜助さんは手をポンポンと叩いた。
「小言は終わりです。疲れたでしょう。ゆっくりしててください。何か適当に作ります。お風呂はどうされますか?」
喜助さんの手料理なんて久しぶりだ。
簡単なもの……とは言ったけど卵とじ丼。
シンプルなこの料理にあるものでしっかり味付けできるのはセンスあるとしか言いようがない。
「これならスプーンで食べられるでしょう?」
しかも私の手を気遣ってのチョイス。
「介助したかったんスけどねぇ。」
と笑う喜助さんに面では引いた顔をするが、正直悪くないと思った。
お風呂に入るために傷口を濡れないようにビニールで包んだ。
右手の焼け爛れた皮膚は硬くなって自由が効かないが、シャワーヘッドは握れるだろう。
というか、いつの間にシャワーヘッドがついたんだ。
「勝手に住みやすいように改造しちゃいました~」
「大家さんに許可は?」
「あははー」
夜一さんは笑って許してくれそうだけど。
悪戦苦闘しながらもお風呂からあがると、喜助さんが髪の毛を乾かしてくれた。
どんな気持ちで乾かしているのかなぁ。
「どうかしましたか?」
「今日、どこで寝る?」
「布団ありませんからねぇ。アタシはいつもアタシの部屋で寝てますが……ポインティサンは蓙でも敷いて自室で寝ますか?」
やっぱり。
彼は私をどうこうするつもりはないらしい。
「一緒はだめ?」
「やだぁ、パパがいないと眠れませんかー??」
タオルを顔までばさっとかけてごしごしと強く拭かれる。
「そういうことじゃない。」
「大人を揶揄うもんじゃないッスよ~」
またゴシゴシとタオルを動かす。
「子どもの私は嫌い……?」
喜助さんはぴたっとタオルを動かす手を止めた。
たまに自分の年齢が嫌になる。
どうしてこんなにも子どもなんだろう。
喜助さんを思う気持ちは強いのに、大好きなのに。
私の記憶は自分の年齢以上のものなのに。
子どもの身体じゃ喜助さんに愛してもらえない。
身体が欲しいんじゃない、ただ愛して欲しい。