第52章 original~空座町怪死事件篇~
「明日、現世に戻ります。だから暫くこっちには来ないと思います。」
「そうですか。まぁ受験ですからね。しっかりと勉強してください。」
「はーい。今日はここに泊まろうと思います。」
「布団がないですよ?」
「雑魚寝で大丈夫!」
隊長羽織を掛けて椅子に座った。
「お茶くらいしかないですけど。」
そう言って、喜助さんはお茶を出してくれた。
「もうちょっとここ、整備しようか。でもなぁ頻繁に使うわけじゃないし。」
「アタシの部屋はもうリフォーム済ッスけどね!」
「……だろうと思った。あちっ」
お茶をフーフーとする。
「事件の方は片付きました?」
「いや、アリカのことがまだ。」
「記換神機がまだってことッスか?」
「……あの人は研究が全てだった。でも、その研究に関する記憶を消してしまうなんて。」
「気分の良い話ではありませんね。」
「危険な研究だってのは分かってます。ただ彼女に研究以外のなにかが残れば、或いはみつけることができればと思うのです。」
喜助さんはふっと笑った。
「優しいんッスね。」
「……ねぇ、喜助さんにお願いばっかりなんですけど、聞いてもらえますか。」
「なんでしょう。」
「彼女、戸籍がないみたいです。」
それだけ言うと、察してくれた。
「分かりました。では、用意しましょう。」
「アリカの為に特別に用意した記換神機。明日使うんだ。でも、大量の記憶を消すことになるから、2日程は昏睡状態になると思う。」
「分かりました、アタシもポインティサンと一緒に帰ります。色々用意しなければですからね。」
「ごめんなさい、現世の法に触れることなのに。」
「構いませんよ。ちょうど、帽子を新調するのに帰ろうと思ってましたし。」
アリカに荷物を奪われた時に、喜助さんの帽子も一緒にどこかへ行ったらしい。
「好きですね、あの帽子。お茶、ごちそうさまです。」
「湯のみ、いただきます。」
左手が使えないのは何かと不便だ。
「晩御飯作ってあげたかったな。この手じゃできないや。」
「そう思うならば、無茶なことするのはやめてくださいね。」
そう言えば『小言はあとで』と言っていた。
あー、これはなにか言われるやつだ。
「総隊長にきつく言われたようですね。」
「だ、だれから聞いたの?!」