第52章 original~空座町怪死事件篇~
「あたしも、パパから愛されるために一生懸命だった。あたしは戸籍もない。学校も行けない。物心ついた時から研究以外になにもなかった。だからさ、あんたらのせいで、あたしの全て無くなったんだよねー。研究データもどうせ消されるんでしょ。」
「ええ、あれは現世を脅かす危険なもの。こちらで処分することになります。」
「あんたの隣にいた良い男、あいつならあの研究データの良さが分かると思うけど?ここにいないの?あんたと話すよりも有意義な時間になりそうなんだけど。」
「……今回は貴方の処遇について言い渡しに来ました。数日のうちに釈放されて現世に帰されます。」
「あーぁ、ほんと、帰されたところで何していいんだか。あたしはいない存在なのに。」
「戸籍についてはこちらで用意し、生活に必要なものは最低限用意します。引き換えに研究に関する記憶を全て抹消します。」
アリカは立ち上がった。
「やめて、やめてよ!!!あたしの全てなんだよ!!!26年間ずっとずっと、研究しかなかった!!26年間が無くなるなんて!!!そんなの!!!死んだ方がまし!!」
ここはその死後の世界というツッコミを入れたくなったのを抑えた。
もし、記憶を消したら彼女はどうなるのかな。
本当に研究が全てだったら何が残るのか。
今回、彼女は事件の首謀者ではあったが、彼女自身は直接殺人行為を行っていないこと。父親が全ての元凶であり、しかも人間として生きる彼女に尸魂界の霊法で罰することは出来ないと判断された。しかし、化物を完成させてしまったことは事実。それは人の犠牲の上でなければ延命できないと知り、倫理に反するとも理解していた。
故に、全く非がないわけでなくまた危険な研究をしないように彼女の研究に関する記憶を全て抹消するということになった。
「あ、あたしには……研究しかないの……パパに褒められたくて……ずっと……」
アリカは泣き始めた。
「やだよ!おねがい!!!やめて!!!!」
「美鈴六席、あとはお願いします。」
私はその場を去った。
「……すっきりしない。」
彼女の今後を思うと、どうしても情が出てしまう。
こういうところは良くないんだろうなぁ。
『隊長!どこいるんです!?四番隊の人が隊長探してましたよ!』
リンが鏡の中で叫んでいる。
「あ、もう戻るよ。」
モヤモヤした気持ちを心にしまった。
