第52章 original~空座町怪死事件篇~
白打での攻撃は外装が硬く、私の威力では無理だ。炎は効いているが、廃炎の威力では弱い。これ以上の鬼道は霊力が足りない。
炎月さえ、炎月が手元にあれば……!!!
「…はぁ……はぁ……」
喜助さんが横になった。
「喜助さん!!!喜助さん!!!」
まだ辛うじて意識はある。このままじゃ、喜助さんが……!!!
一瞬の隙をつかれ、蟻は鉤爪で私を切り裂いた。
避けたつもりだったが、鉤爪の鋭さ故に肩から腕にかけて40cmくらいの傷ができた。血がドバドバと出ている。うまく力が入らない。
「……ふぅ。」
大丈夫、なんとかなる。怪我を承知で瞬歩で蟻に近づいて、右手の鉤爪の根本を持った。
ギチギチと音を立て抵抗する。
「……ッ!!」
首が痛み、何かが侵入してくる感覚があった。しかし、狼狽える暇はない。
「縛道の四【這縄】」
怪我をした左手と天井を繋いだ。
その固定した左手首に鉤爪を振り下ろした。
ガッという音と共に、神経に刃が刺さる感覚、そして肉が避けていく感覚、全てが形容し難い痛みだった。
「斬り落とせ……ッ」
足元に自分の大量の血液と共に手首、そしてブレスレットが落ちた。
蟻と距離を取らず、そのまま斬魄刀の名前を呼んだ。
「守護せよ【炎月】」
現れた炎月は既に熱く、炎を纏っていた。
それに慄いた蟻は少し後ずさったが、逃がすはずが無い。すぐに攻撃へと転じた。
蟻の胴体をほぼ切断、炎で焼いた。羽が燃え、床に落ちる。そのまま逃げようと這っていく蟻の頭に炎月を刺した。
「業火炎舞」
炎月を中心に炎が球体に広がった。
蟻は炎から逃れるために飛び跳ね、のたうち回った。
しかし、すぐにそれは動かなくなり、炎が引いたあとには炭化し、もう既にそこに何があったのかわからなかった。
『はぁ?ばっかじゃねぇの!!腕切り落とすなんて!!』
炎月の声を他所に、喜助さんに駆け寄った。気を失っている。卵が無くなった確証はない。慌てて起こした。
「喜助さん!!!喜助さん!!!!」
右手で揺さぶると、少しだけ顔を向けた。
「女王蟻 が死んだ時……脳の中で悲鳴に似た声が聞こえました……それで気絶してしまったようです、」
「た、卵は?!」
「……もう、大丈夫ッス」