第52章 original~空座町怪死事件篇~
「どこか痛い?痛み止めしようか?」
喜助さんは私の声に反応しなかった。
頬や耳が紅い。額に触れると熱があることがわかった。
立たせていた左足は力をなく倒れ、完全に座り込んだ。
頭を抑えながら、顔を俯かせる。
「……五段階目、?」
そう聞くと、小さく頷いた。
喜助さんの懐からメモの束が出てきた。
それを拾って目を通すと、喜助さんが伝えた内容の他に班長の身体の異変についても書かれていた。
『いんちょうしつに、ちかがある。いたい、いたい、だれかがはいってきた、ちょう さたいであってほしい、とにかく、きろくをのこす、のこしたあと、おれは、しんでしまうのか、ありをころせば、たすかったのだろうか、』
このメモが恐らく最後のものだろう。呼吸が深くなり、身体を震わせている。表情は髪の毛でよく見えないが、身体の痛みを訴えた時の苦痛のものではなかった。
彼のこんな姿は記憶に無い。
焦る気持ちと不安な気持ちが渦巻いたが、もう時間がない。このまま気を失ったら……建石さんの死に際が頭を過ぎる。
女王蟻を倒せば、卵は消えるはず。脳がどういう状況になるかわからないが、とにかく頭が破裂することはない。この人を失うわけにはいかない。そう思うと渦巻く不安も消え去り、焦る気持ちも無くなった。
―最善を尽くせ。
喜助さんを壁に凭れさせた。
「…………そのまま保ってください。」
もう返事をする余裕すらないらしい。急がなければ。
懐中電灯を付けて廊下に投げ出した。扉を開けてソレを待つ。
「縛道の七十三【倒山晶】」
喜助さんの周りに結界を張って、思いっきり闘えるようにした。
「起きててくださいね!!」
すると、ブーンという不愉快極まりない羽音が近づいてきた。
喜助さんの側は離れられない。この部屋のなかもしくは廊下で決着をつけなければ。ブレスレットに霊力を制限されてることもある、鬼道は使えなくても蟻ごときに
羽音は大きくなっていく……蟻って飛ぶっけ?
「廃炎!!」
不意をつくことができ、化物はよろめく素振りをみせた。
1mはあるかというまさに蟻、否、羽蟻の化け物は尻の部分を曲げた。尻の先端から針のついた紐のような器官が伸びる。
「あれに当たるとアウト……いや、違う」
当たってもいい。とにかくアイツを殺せば全ての卵は消えるはず。防御を捨てよう。
