第52章 original~空座町怪死事件篇~
「言ってくれたらかゆみ止め用意させたのに。」
「あはは、すいません。」
「何の虫でしょう、蚊?藪蚊?というか、掻いたら酷くなるんですよ!!とびひになるかもですよ!」
「痒かったんで……」
「帰ったら薬塗りましょう。それまで掻いちゃだめですよ。」
「……ハイ」
階段を降りる。
「1階、恐らく化物はここにいるでしょう。」
「でも、光と音と香りに気をつけましょう。片桐はどこにいるのかな。」
「片桐がいる場所は恐らく地下です。班長サンのメモに、院長室に地下へ続く階段を見つけたとありました。見つけた時に我々が運び込まれたのに気付いたようです。3階まで上がる過程でメモを各地に隠して、我々に全てを託した。」
「そう……じゃあ先に院長室に行こう。」
「院長室は階段すぐ隣の部屋です。」
中に人の気配はない。
2人で入り、院長室の床を調べる。
院長室はほかの場所とは異なり、不自然なほど掃除が行き届いていた。日常的に使用している証拠だろう。
一箇所だけ質感の異なるタイルを見つける。
「喜助さん、ありました。」
タイルを取ると、中にハシゴ柱があった。
「暗い……」
「アタシが先に降ります。降りたら合図しますんで、降りてきてください。あと、あまり音を立てないように。」
「はい。」
さすがは元隠密機動の二番隊。音もなく降りていく。
喜助さんからの合図で私もそれに習って降りてみるも多少の音が響いてしまった。
「ごめんなさい、音が」
「しっ」
私は口を手で抑えた。
中は殆ど何も見えない。
壁や伝いに廊下を歩くしかない。
50mほど歩くと光の漏れる壁に出た。
恐らく扉だろう。
「……中に誰か。」
「うん。」
「開けます。」
扉を開けると壁の一面が電子画面で数式が流れているその下は技術開発局にあるような機械が並んでいる。
そこに一つ、大きな椅子があった。
「もう起きちゃったかぁ。ここに来るまで、あの子と遭遇しなかったみたいね。」
「女性の声?」
椅子がくるっと回転した。
サングラスを掛け、白衣を着た女性だ。
「片桐松治……?」
「アハハ、それはうちのパパだよ!!アハハハ!!」