第46章 original~霊障篇~
一護が斬月を構えた。
「はじめ」
私の合図で二人が刀を重ねた。
とてもじゃないけれど、面白い試合とは言えない。
『仮の肉体みたいなもの』と言った大きな木彫りの像の中で一人でじっとしてた体を、大きく動かしているのだ。瞬歩を使うでもない、鬼道を使うでもない、ただ刀を打ち付けるのみの試合。
「そんなものか!ほら、もっとぶつけてこいよ!」
一護の声が響く。男は肩を揺らして何度も何度もぶつかりに行く。
面白みのない試合ではあるが、決してつまらないものではない。どんどん胸が熱くなり、自然と男に激を飛ばしていた。
倒れては起きあがりを繰り返し、何度も向かっていく。
「俺からも攻めてくぜ!これは、死神の分!これは……今まで霊力を奪われていた関係ない人の分!そしてこれが俺の大切な人達を傷付けた……分!」
一護の三度の切り込みにより、男は吹き飛んだ。
思わず男の方へと皆が駆け寄った。
「……折れている。」
石田さんの言葉に皆が息を呑んだ。
「うっ……」
薄く目を開けた男の表情は憑き物が取れたような晴れやかなものだった。
「迷惑をかけた……礼を言う。」
「……実は俺ももうすぐで死神の力が消えちまうんだ。そのときまでに悔いのないようにこの力を使いたいと思ってる。だから、お前のことも他人事に思えなかったんだ。」
一護の言葉は皆の胸に刺さったことだろう。
彼が力を失う時、どんな言葉をかけてやるのがいいのか。そんなのわからない。
誰よりも大切な人達を護る力を欲した者がその力を失うことへの絶望感、焦燥感、喪失感は想像出来るものでない。そう易々と言葉なんてかけられないだろう。
「そうか、そうだったのか……。お れ はも、う悔いはい……死神として、死ぬ こと が でき て よか」
彼の身体が光、そして消えた。
真っ赤な太陽が西の空へと沈む。まるで彼も共に連れていったかのように、辺りは闇に満ちた。