第38章 過去編~鍵~
夜一さん直々に出迎えてくださっている。少しは悪いと思っているのだろう。
「すまん、お主にしか頼めなんだ。五大貴族会議のことをすっかり抜けておってな。家の者にも頼めぬし、二番隊にも頼める女子がおらぬしで……適任がポインティじゃった。」
「だとしても、ちゃんと用件は伝えてください。」
そう言って薬草を渡した。
「礼を言うぞ。ありがとう。今日はうちで泊まっていけ。夕食も用意しておるし、着替えもある。明日も真央霊術院まで送らせる手筈を整えておるがゆえ、ゆっくり休むのじゃ。……喜助も呼んでやろうか?」
「お礼だと思って、お言葉に甘えさせていただきますが、喜助さんは大丈夫です。」
「そうかそうか、良いのじゃよ、ふかふかの布団を用意してやるから、良い事をしても」
「夜一さんったら!」
「にゃはは、まぁゆっくりしていけ。儂は隊舎に戻る、用があれば侍女の蜂美鈴に言いつけよ。」
「侍女の蜂美鈴と申します。」
夜一さんのお礼はそれはそれは昨晩の宿を超えるおもてなしの数々で、満足度は高かった。
「体調の方はいかがですか。魂魄の件、夜一様から聞いております。」
美鈴さんが声をかけてきた。
「問題ありません。ありがとうございます。」
「何かあればなんなりとお申し付けくださいませ。」
私の魂魄は実質戻っている状態だ。喜助さんの卍解によって。
これで何も問題がないなら良いが、彼が倫理的な事で疑われるようなことは避けなければならない。
「少しの間は霊力抑えとくか……」
独り言を呟いて、目を瞑った。
翌日、夜一さんに用意してもらった衣服を身につけて、霊術院へと向かった。
「おっ!キミキミ〜」
声をかけたのは、私にミミハギ様のことを教えてくれた生徒。
「おはようございます、先生」
「おはようございます。昨日、ミミハギ様のお堂に行ったのよ。」
「ええ!本当に行ったんですか!あんなところまで?」
「別の用事があってね、ついでに、って感じなんだけど。」
「そうだったんですね。きっと御加護がありますよ!」
宗教といえば、現世の人間が抗えぬ死の恐怖を紛らわせるためのものだと思っていた。
尸魂界にもそんな信仰があったなんてと、不思議に思うが、何かにすがりたくなるのも仕方ないのだろう。