第38章 過去編~鍵~
その後、かなり良いお宿で一泊した。
部屋に露天風呂のついた良いお宿。食事も大変豪華なものだ。
「隊長様、しかもあの四楓院家の当主様と浮竹家の方がこんな田舎宿にいらっしゃるなんて、どうおもてなしをすればよいのやら、少しでもお身体お安めくださいませ。」
「……夜一さんだと思われていますか?」
「まぁここは、そのほうが都合良さそうだな。」
翌朝、出立して間もなく、例の禁域へとたどり着いた。
「俺が用意した米だ。それから四楓院家からは反物を預かっている。これだけ渡せば、薬草を採ることも許してくれるだろう。」
おっと、交渉から私がするのか。
「ここから先は殿方は立ち入り禁止でございます。」
門番の女性が声をかけてきた。
「この米と反物を運びに来ただけだ。」
「そちらに置いてください。」
「わかった、それでは俺は薬草探しにこの山を歩くよ。日が真上に登る頃にここで合流しよう。」
門番とのやり取りの後、中へ入ることが許された。米や反物は喜ばれるらしい。
「薬草をお探しとの事でしたね。案内します。」
中はこの周辺の集落よりもしっかりとした建物が並んでいて、畑もあるようだ。
「あれだけのものを払っていただきましたので、薬草はお好きなだけお取りください。」
言われていた薬草はすぐに見つかった。集まって自生しているようで、必要な量の3倍は取れた。
日が昇り、浮竹隊長と合流する。
「こちらもたんまり薬草が取れた。俺の用事は済んだ。今度は君の番だ。」
先日の生徒の言葉を思い出す。
「この辺りにご利益のある御神体を祀っている御堂があるとか。最近の私はあまりついていないので、少し参拝していこうかと。」
浮竹隊長はあぁ、と心当たりがあるようだった。
「ミミハギ様のことか!」
「物騒な名前ですね!」
思わず耳を塞いだ。
「はは、場所ならわかる。少し遠回りになるが寄っていこう。」