第38章 過去編~鍵~
「喜助さん、魂魄を戻す方法を先ず教えてください。」
そういうと、喜助さんは長考した。
「戻す方法っていうのが、その例えば他の人の魂魄を奪って……みたいなことなら、しない。喜助さんはそんなこと考えないと思うけど。次に、喜助さんが不利益になることならしない。喜助さんのいう術はどれかに当てはまりますか。」
「他者を犠牲にはしません。安心してください。」
後者は否定しない、か。
「後者に関しては場合によっては、です。強いて言うなら人道、倫理、道徳に反する事っス。霊法に関してはグレーでしょう。」
「グレー?」
「もし、この行為によって"危険因子"と見なされば、僕の元職場で拘束されます。ま、恐らくは誰も気付かないっスけど。魂魄の2割強ほどを回復しても目視できるわけではない。魂魄の質量は僕の開発した装置を通して数値化するしかありませんからね。」
「バレはしない、けど人としては良くないこと……?」
「ええ。今から僕は、貴女の魂魄を作り出そうとしていますから。」
それで、私はピンときた。
もし、人工的に魂魄を作り出すことができたら、それは確かに"神の領域"を侵すことだ。人工的に生命を作るのと等しい。それにもし、私と同じ質量の魂魄を作り出せるのなら。考えただけでも身震いした。
「スレスレのことはしてますけどね。魂魄を改造したり、魂魄のようなものを作ってみたり。でもそれは紛い物っス。今から僕は、貴女の魂魄をつくります。」
「できるの……?」
「存在する魂魄と同じ魂魄を作ること、これは科学で何とかできることではありません。」
「科学で出来ないことならどうするの。」
「正式には『作り替える』んス。方法については貴女が魂魄を戻したいのなら、教えます。」
これは教えてくれないなぁと思って少し口を閉じた。
「今回だけ、少しだけ我儘になろうかと思います。例えいつか罰が当たっても。」
「喜助さん……」
「僕はやります。貴女もそれでいいですね?」
「法には触れないのよね?」
「現状は。バレることもないっス。」
「そう。わかった。」
「ま、貴方が嫌だといえば嫌われる覚悟で無理やりしたんですけどね。」