第38章 過去編~鍵~
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首の傷、血は止まっているが痛そうだ。
後で手当しなければ。
氷のように冷たい身体に井戸から組み上げてきたばかりの水で濡らした手ぬぐいはきついらしく、瓶を持っていても身体が震えている。
乾いた手ぬぐいで水気を取っても寒いらしい。
濡れた衣服をどうにかしなければならないし、汚れたままでは布団にも入れない。
一番は風呂に入ることだが、この状態では溺死しかねない。
「服……着替えましょうか。」
袴に手を掛けた。青白いふくらはぎが着物から覗かせている。
「……自分でします……喜助さん……温かいお茶を貰って来て頂けませんか。」
彼女がふくらはぎを隠す様な仕草を見せる。
「着替えが終わったら言ってください。」
そりゃあそうっすよね。小さい頃は一緒にお風呂入ったりしましたが、もう何十年も昔の話。彼女はもう子どもじゃない。自分もあの時の様にいきませんし。
「こんなもんしかないんやけれど」
女将さんが綿の入った羽織を貸してくれた。
「すいません、あと温かいお茶をお願いします。それから、温かいお酒も出していただければ。」
少量の酒ならば血行も良くなる。
「今すぐに。」
暫くして部屋の前で待っていると、声が掛かった。
「女将さんから羽織を借りました。お茶とお酒を持ってきてもらいます。お酒を飲めば血行がよくなりますからね。」
彼女の震える肩に羽織を掛けた。
「……現場に戻ってください。」
彼女は羽織を握りしめて言った。
「貴方は隊長、私の傍にいては駄目です。」
そう言って汚れがあまりついていない隊長羽織を渡した。
「もう私は大丈夫、良くなったら自力で戻ります。何かあれば天挺空羅します。」
今の貴方に鬼道ができる程の霊力は無い。
だが、
「事件を片付けて、魂魄を戻す方法をみつけます。講師のことも、何もかも今は考えなくていい、自分の身を考えてください。」
彼女は僕のことをよく分かっている。
貴女のことになると他が見えなくなる欠点。
「隊長の顔になった。」
そう言って冷たい手で頬を覆われた。
「では、いってきます。」
「いってらっしゃい。」