第38章 過去編~鍵~
--------------
誤算?いや、自分のミスだ。
賊が残っている可能性を捨ててなかったのに彼女を一人にした。
鬼道の講師とはいえ、戦闘の訓練を積んでいる訳でもない。
奇襲されたら、一般人も同然。
どこの死神だ。一連の事件の犯人だろうか。
雨の中、山林を走る。
霊圧を抑えているらしく、そう簡単に見つからない。
「南の心臓 北の瞳 西の指先 東の踵 風持ちて集い 雨払いて散れ 縛道の五十八【掴趾追雀】」
奴の霊力を探り捉える。
「……こっちか!」
地獄蝶を使い、この状況を打破できる人物たちに連絡をとる。
「夜一さん、第五地区、第十二地区に続く四楓院家離れの山林、一条湖に向かって人を寄越してください。それなりに時間はかかるでしょうから、落ち着き次第、詳しい場所の連絡を入れます。ひよ里さん、魂魄消失事件の犯人と思われる人物を今追っています。帰るまで、隊をお願いします。それからマユリさんに僕の部屋の赤いファイルの#114を作るように伝えてください。ポインティの魂魄が削られました。その処置に必要な一つの材料ッス。頼みます。」
霊力を捉えた方向へ進んでいくと―
「……それで後ろをとったつもりか!」
木の上から降りてきた男が斬魄刀で背中を狙ってきた。
「……。」
「同じ死神ッス、手荒なことは出来るだけしたくない……なんて甘ったるいこと言うつもりはありません。アンタにはここで死んでもらいます。」
夜一さんに人を寄越せと言ったのは身柄を引き取って貰うためだったが、自分は頭に血が上ってるらしい。目の前の男を、殺さなければ気が済まない。
この場に彼女がいなくてよかった。
あの人にはあまりこういう所を見せたくない。
「起きろ【紅姫】」
男は斬魄刀を構えた。
「隊長相手に背中を見せないことは評価しましょう……尤も背中を見せたりなんかすれば、一撃で貴方を仕留めますが。啼け【紅姫】」
「破道の七十三【双蓮蒼火墜】」
詠唱破棄という高等技術を難なく使いこなす、死神としてはかなり有能だ。
「【血霞の盾】」
双蓮蒼火墜を防ぎ、次の技を繰り出す。
「【切り裂き紅姫】」
盾から無数の刃が死神の身体を傷つける。
「さて……あまり長く遊んであげられなくてすんません。ポインティさんの魂魄を返して貰いましょうか。」