第38章 過去編~鍵~
遠くで雷の音がする。雨の匂い。
夢の世界からゆっくり現実へ戻る感覚―
パタパタと足音が現実への鍵だった。
「喜助さん、ごめんなさい寝てしま……」
背後から口を塞がれた。
違う、喜助さんじゃない!!
慌てて振り払おうとしたとき、身体の自由が効かなくなった。
これは【崩輪】、つまり相手は死神。
だったら、鬼道を使おう……!!
「少しでも霊圧を上げてみろ、お前の首が無くなるぞ。」
そういって、斬魄刀をあてがわれた。
「言うまでもないが、声も出すなよ。」
そう言って口を抑えていた手を外す。
「何が目的、……っ」
そう言うと、首にあてがわれていた刃がくい込んだ。
「度胸だけは買ってやる。」
血液の筋が垂れた感覚がある。
「まさか、貴方が魂……ッ」
刃を少し引かれた。痛みが走る。
「次は無い。……お前程の霊力があれば死にはしない、少し寿命が縮む程度だ。」
男は手を私の心臓の真裏あたりに当てた。
次の瞬間。
背中から何かが体内に侵入してくるような異物感を感じた。
それは何かの比喩ではなく、その言葉通りの意味だ。
痛みはない、が呼吸が出来ない。
そしてその異物が心臓部へ到達するにつれ、力が抜けていく。
「あ……、」
異物が心臓を捉えた感覚があった。
"掴まれた"まさにその言葉の感覚。
意識が遠のく―
「き……すけさ……」
カチャ、と音がした。
体内の異物がその場に留まる。
「首を掻き斬られたくなくば、ポインティを解放しろ。」
身内の自分でも凍るような声、普通ならば安心する状況のはずなのに、私も彼に対する恐怖心で固まった。
「へへっ、解放してやるよ!」
男は私の体内の何かを掴んで引き剥がした。
その瞬間、私は意識が遠のき、地面に倒れ込んだ。
ポツポツと雨が降り、あっという間に本降りになる。
「ポインティ!」
私をぎゅっと抱き抱える。
横目で、死神を見た。
坊主頭の大男。
左手には光り輝くものを持っていた。
男は後ずさるようにすると走った。
「縛道の六十三【鎖条鎖縛】」
男は縛道もろとも打ち消す鬼道をぶつけた。
「破道の六十三【雷吼炮】」
迫る光、詠唱破棄のはずなのに威力が高い。
「縛道の八十一【断空】」