第38章 過去編~鍵~
暫くすると東雲と呼ばれていた若い男が来た。
「蓮美先生、詳しく教えてください。」
リカちゃんに食べるものと飲み物を与えて、私たちは少し離れた。
「彼女、外傷は殆ど無いのに、自力で立てないほど弱っているの。霊力もかなり削られている。そして、彼女の口から何者かに襲われた、と。魂魄消失の件と関わりがあるかもしれない。と思って。」
東雲は考える素振りをしてリカちゃんに近付いた。
「……これは」
「何かわかったの?」
「確証があるわけじゃないっすけど、魂魄を削られているのでは……?」
「魂魄を?」
魂魄、即ち魂そのものを削られたというのだ。
「実は自分も死神になる……10年程前に、削られたんっすよ。」
「削るってどういうこと?」
「自分は親に言われて山に木を斬りにいったとき、後ろから気配がした……と思えば力が抜けて、丸一日動けませんでした。死神になって、霊力を扱うようになってから気付いたのですが、あれは、霊力をとられたんじゃなく、霊力の根本、魂魄を削られたんだと理解しました。」
その事実に言葉を失った。
「犯人は?目的は?護廷隊は何も動いてないの?」
「さ、さぁ。護廷隊は……認識してないのではないでしょうか。でもいま、魂魄消失事件として動き始めている。この件も報告にあげておきます。」
「……死神は尸魂界を守るのが仕事。もっと早く動いて解決すべきなのに。」
東雲は困ったような顔をした。
確かに、貴方に言っても仕方ないことだ。
「削られた魂魄は元に戻らないっす。でも時間はかかりますが霊力は戻ります。生命活動そのものに直接関わることは無いっす。」
「安静にしておけばいいのですね。」
「何かあれば連絡ください。十二番隊、浦原隊長を通してでも構いませんので。」
「ありがとう。」
「では自分はこれで。」
東雲は頭を下げて帰った。
リカちゃんをおぶって、山を降りる。
夜が完全に更けて、日にちが変わった頃、チエ子さんの待つ家に到着した。
「リカ!!」
チエ子さんはリカちゃんに抱きついてわんわんと泣いた。
「かあさん……ごめんなさい」
「貴女が無事ならいいの!!」