第37章 過去編~交差~
「ふぅ……ただいま」
闇に消える言葉
返ってくるはずないけれど一応、日課としている
「おかえりなさい」
「ただい……」
え。誰もいないはずなのに……
「楽しかったスか~?」
返ってきた声の主はこの家のもう一人の主。
「き、喜助さんっ!」
「ここ、僕の家でもあるんッスから、そんなに驚くことないでしょ?」
「今日は隊舎に泊まるんじゃ……」
「ポインティさんが平子隊長にお持ち帰りされたらと思うといてもたってもいられなくってね…だから帰って来たんッスよ。」
「大袈裟ですよ?心配しすぎです。」
そう言うと腕を引っ張られ壁に寄せられた
「心配しますよ…好きな人が他の男と共にいるなんて……嫉妬で気が狂いそうッス」
好きな人……?
喜助さんが私の存在を誰かに説明する時、"大切な人 "と表現する。
でも"好きな人"と言われた事なんてない。
突然、思考がぐるぐるとまわり始めた。
「嫉妬って…冗談やめてくださいよ~」
「冗談に思えますか?」
暗闇で喜助さんの瞳が光る。
それは熱っぽく、しかし、どこか凍てつかせるようなものだった
「この際なのではっきりと伝えますが、僕はポインティさんのことが好きなんッスよ。」
「妹とか、幼馴染みとかそういう意味で、でしょ……?」
「僕は貴女を幼馴染みのように安心する存在だと思うし、妹のように可愛く想う。だけどそれ以上に…貴女のことを愛している。」
私は何も言えなかった
「知らなかった、ですか?」
知らなかったわけではなかった。
知ってたけれど、言葉や行動が無かったから実感が無かったし、このままでいいかと思っていた。
どこかで気が付かないふりをしていた。
けど今、幼馴染みや兄として見てた喜助さんに
好きだと言われて……なにか熱いものが胸を溶かしていく。
私が黙ったままでいるのをみた喜助さんは抑えてた肩から手を離した
「大分飲んでるみたいッスから、早めに寝てくださいッスよ。明日も朝から授業でしょ?」
「あ……はい…」
「僕はすることがあるので。」
そう言って、書斎に入っていった
彼の言葉が何度も反響する。
その度に胸がぎゅっと苦しくなる。
思考回路が正常に動くまで、暫くその場に立ち尽くすしかなかった。