第32章 過去編 ~序~
数年の時を経て、彼が今で言う思春期を迎えたくらいになった頃。
「喜助、お主のその霊力、死神として使わないか?」
既に死神となり、席官となっていた夜一さんの薦めで喜助兄は死神の養成学校、真央霊術院へ通うことになった。
最初はのらりくらりしていたが、試験に一発合格した。
そのお祝いを四楓院家で行った。
彼の力を活かせられる場所
それは私にとっても嬉しかった。
嬉しかったけれど、複雑な気分だった。
だって死神になったら……一緒に暮らせなくなる。
しかし、それは私のわがままだから、笑顔で送り出さないといけない。彼は霊力も高いし頭もいい。ここで暮らしていていいはずが無い。
「喜助、心配するな。毎日は帰れないかもしれぬお主のために、幼いポインティのことは面倒を見る。お主はただ学に励めば良い。ポインティも喜助も、四楓院家の一員、儂の家族なんじゃから!」
「夜一さん、私のことまた子ども扱いするー!」
「お主も、もう少し大きくなったら真央霊術院へ通って皆で死神として働こうぞ!はははっ」
四楓院家での夕食会が終わり、自宅に帰った。
「ポインティ、」
玄関に入ってすぐ明かりを探した。
「待ってね、灯り付けなきゃ」
火は危ないと彼はいつもそういうけど、これからは私が一人でできるようにならないといけない。いつも傍で見ていたから、私だってできると火を起こして燭台に灯そうとしたが、喜助兄が淡々とこなしてしまった。それに対して抗議の声を上げようとしたが、明かりに照らされた彼の曇った表情を見て、声を詰まらせた。
「僕、真央霊術院に受かったこと、そこまで嬉しくないんです。」
動きを止めた
「……どうして?死神になれるんだよ?」
「だってこうしてポインティと静かに暮らせなくなるじゃないっスか。」
なんだ、私と同じこと……
一瞬頭を過ぎったが、ここはちゃんと送り出してあげなきゃ。
「寂しいけど…会えなくなるわけじゃない。それに、喜助兄はこんなところにいるより、その力を活かせられるところに行くべきです。……だってお兄ちゃんの霊力、夜一さんに負けないくらい強いもん。」