第32章 過去編 ~序~
「それで一人で来たのか!?」
驚きの様子で私を見つめる夜一さん。
「往復1時間はかかる距離のはず。疲れたろ、ほれ、中に入ってちと休め。」
あれよあれよとお茶やお菓子が出された。
「お主の成長に目を見張るものがあるな。ほんの半年前までは幼子のようじゃったのに。」
その言葉に、後ろで控えていた夜一さんの世話係の女性が大袈裟に頷いた。それに気づいた夜一さんはその女性に同意を求めるような素振りを見せた。
「私も末端貴族の出である為、尸魂界には長くおり、様々な人と関わってまいりましたが、現世の人の子のように成長される方は初めてでございます。」
それを聞いた私は口を覆った。
「どうしよう、このままだとすぐにおばあちゃんになってしまいます」
その言葉を聞いて周りの人達が笑った。
「お主の生前の話を聞いておる限り、どこぞの貴族だったとか。肩の凝る生活を強いられておったのじゃろう。儂にはその気持ち、よーくわかるぞ。」
「まぁ、姫様。私たちがまるで姫様を縛っているような物言いを。目を瞑っていることもあるでしょう?それとも、大旦那さまに昨日のー」
「やめい、やめい!そ、そのような環境から脱したゆえに、ポインティが精神的な成長を遂げているのやもしれぬな。」
「死して成長するって変な感覚です。」
「ふむ、儂にとっての死は霊子となること。尸魂界でお主は生きて、二度目の人生を進んでおる。それは儂にはわからぬ感覚じゃな。」
「もうあまり現世のこともはっきり覚えていないし、近い将来、私もそのような感覚になりそうです。」
「現世の話は儂も聞いていて興味深い。お主が良ければ記憶が鮮明なうちにまた話してくれ。知識が広がることは良い事だからな。」
「夜一さんにはよくして頂いていますので、お話し相手になれるのであれば喜んで!」
「可愛い奴よの!儂の妹分なだけある!」
「夜一さんの妹!嬉しい!」
それで、おつかいは?
「儂に妹か弟ができるらしい。」
「それはおめでとうございます!」
「お主は姉になるわけじゃな!」
「嬉しいです!」
「そんなこんなで家が浮かれておってな。儂にも足りすぎるほどの装束や茶菓子の類を買い与えられて困っておるのじゃ。もろうてくれんか?家までは荷車で運んでやる。お主も馬に乗って帰ると良い。」