第32章 過去編 ~序~
「ポインティ、本当に大丈夫っスか?やはり僕もついていきますよ。」
「だぁめぇ!!!おつかいできる!!!」
二人での暮らしに慣れ始め、私は彼を兄のように慕い、彼は私を妹のように世話をした。
お互いまだ幼かったこともあってか、馴染むのにはそう時間はいらなかった。
生きていた頃の記憶は朧気になってきた。そもそも、自我が芽生えてからそう長いこと生きていられなかった。この世界で過ごし、精神が成長していくことで、それなりの発達が見られるようになった。
俗に言うイヤイヤ期、中間反抗期というやつかもしれない。
もちろん、幼児ではないのだが、生きていた頃は良い意味では見守られて、悪い意味では制限されていた生活を送っていたがゆえか、今は自由を感じている。
食べたいもの、着たいもの、読みたいもの、経済的な制限はあれども、誰かに強いられることはない。
遊びたいときに遊べて、寝たい時に眠れる。
自分の心の思うままに発言ができる。
それを実感した今、少々わがままになってしまっている。
私が時々思い出したかのようにぽつぽつ語る生前の話を聞いて、喜助兄はそういう時期なのだろうと心穏やかに、ときに厳しく接するなどをして私のことを見守っていた。
今もまさに衝突が起きているのはそれが起因である。
「夜一サンのところッスよ、怖い門番とかいるかもしれないッス。」
「だぁぁぁぁめぇぇぇ」
「そもそも、瀞霊廷の中に入ることが出来るのかどうか……」
「門はすぐそこだもん!この札みせるだけでしょ!」
「そうッスけど……。それに小さい女の子一人ではやはり危険ッスよ。」
人攫いという言葉は使わなかった。ポインティが山の麓の道でずぶ濡れになって座っていた過程を知っているからだ。
「いけるもん!!」
「わかりました、そしたら、白道門までは一緒にいきませんか?ちょうど、お味噌きらしてたんで、買い出しついでに。」
喜助兄は大人びているが、現代の年齢の感覚で言うとまだ中学生に上がる前くらいの年齢だ。彼がなぜ夜一さんのもとで世話になっているのか、出自は、などは何度か聞いた。しかし、興味が無くなったため記憶の奥底で眠らせることにした。
自分もわがまま言いたい歳だっただろうに、とこの時期のことを振り返るたびに彼に謝罪するのだった。