第26章 服従
振り返ったその瞬間、右手に蛇のようなものが絡まっていく。
それに引っ張られるように右手が封じられた。
よく見ると、花の蕾を纏う細い弦。
あの子の斬魄刀。
腕に絡みついた弦は強く引っ張り、自分の行動を邪魔しようとした。
ええの?君らのご主人様、あのままやと-
室内からは嗚咽混じりの嬌声が聞こえてくる。
彼女の霊圧が感じたことの無いほどに不安定になっている。
しかし、彼女の斬魄刀の技のひとつであろうこの弦は、拒絶している。
助けに行くな、ってことやろ
わかってる。行ったって、藍染隊長を倒すことなんて無理や。
せやけど、あの子助けることはできるかもしれへん。
声、ではない、しかし確実に、彼女の斬魄刀の意思が伝わってきた。
だいじょうぶ、いまはまだ、
あなたのそのこうどうは、たいせつなひとのために、
ほんらいのもくてきのために。
そうは言うても、あの子があの男に、心を砕かれていくのを黙ってみてられへん
あなたがここでこうどうをおこしたら、
きっとあのこはいまいじょうにこころをくだくでしょう
あれはやさしいから、このようにほけんをかけたんです
あなたが、じぶんをまもることで、たちばが、わるくならないように
あなたのつみかさねたことが、むだにならないように
たとえ、じぶんのこころがくだけても、あなたをまもるために
……そんなん、卑怯やろ
わたしたちの"愛し子"は、わたしたちがまもります
ここはどうか
それを最後に、弦は一輪の花を残して枯れてしまった。
その花を握りしめて、扉を背にして歩いた。ただひたすら、暗がりの、夜の城を、あてもなく。