第65章 千年血戦篇
周りを見渡すと、高校生がお弁当を広げて友達と楽しそうに話している。この世界の裏で起きていること、世界が崩壊の危機にあることなんて彼らはまったく知らない。ただただ、目の前にある平和を享受し、明日も明後日も永遠にそれが続くものだと疑うことなく……
そうしていると、自分の教室の窓からこちらを覗いていた男の子と目が合った。彼は私と目が合ったことを自覚すると軽く手を上げてそのまま立ち上がって見えなくなった。
放課後には「とにかく、だめ!絶対!戻らなくていいからね!」と七海から念押された。
学校近くの交差点で日暮波瑠と待ち合わせをしているらしい。私は彼のこと何も知らないわけで。どうしていいのやら。
「ポインティ、遅くなってごめん」
「うん、いいよ。今日、部活は?」
「オフ」
にかっと笑った無邪気な顔は子どもらしさがあった。
信号待ちの間、傍にあった電柱を眺めた。
あの女の人は、流魂街にいるのだろう。不自由なく暮らしていればいいのだけど。
「……てあれ?何してるの」
日暮波瑠が手を合わせていた。
「ここじゃなかった?ポインティが手を合わせてた所」
「うん、ここだよ」
「だから手を合わせてる。天国に行けますようにって」
彼は他人の死を悼むことができる人間らしい。私も電柱に向かって手を合わせた。女の人はいないけど。きっと流魂街で新生活を送っているけど。そんなものはどうでもいい。死者を思い続けることは、きっと必要なことなんだと思う。生きている者にとっても、死んだ者にとっても。
私も手を合わせていると、いつの間にか青信号になっていた。
「海の方に行ってみないか?」
「寒いよ」
「自販機であったかいもの買っていこう。」
見栄を張って彼は小銭を多く入れて、紅茶華伝を購入し、私にボタンを押すように指示した。
「ポインティは何にする?」
「じゃあこれ」
飲み物を取るとお釣りのレバーを引いた。
「ありがとう。でも、こういうのは、君が稼いだお金でするんだよ。君のお母さんやお父さんに奢ってもらうことになる。」
彼はたしかにと納得したようだった。……ま、私はそこそこ稼いでるし。現世のお金に換金してもらって、喜助さんの家に置いた金庫にしまってある。幾らかわからないけど。自分で口座を作れるようになるまでは数えないでおこう