第37章 遊郭へ
──ドォンッ!!!
凄まじい轟音だった。
目に届かない距離であったとしても、蛍の意識を向ける程に。
光の届かない小さな部屋の中ではっと顔を上げる。
轟音のような響きが耳の鼓膜を震わした気がした。
微かなものだが、確かに遊郭の中で起きた爆破だ。
(これは…)
その爆破には憶えがあった。
何せ蛍自身がその身に受け、体の大半を失ったのだ。
あの鬼殺隊本部の山中で。
「音…天元?」
そわりと頸の後ろが粟立つ。
遊郭の任務を担っていたのは他ならぬ宇髄天元だ。
彼の駆使する音の呼吸は、派手好きらしい轟音を発するものが多い。
堕姫は外出中。そこではち合ったのなら自然と音の正体に結びつく。
二人の戦闘が起こっているのか。
擬態した幼い姿のまま、気付けば蛍は部屋から抜け出していた。
(場所は…っわからない。でも絶対近くにいるはず…!)
音を立てないように小走りに走っているだけなのに、呼吸が無意識に上がる。
探索に影鬼は使えない。
使えば遊郭全土に張り巡らされている堕姫の帯が、たちまちに蛍の異変を捉えるだろう。
それでも今まで実直に守っていた堕姫の規則を破り、蛍は外へと続く廊下を音を立てずに走っていた。