第37章 遊郭へ
楼主が口を割るのは早かった。
脅された結果というよりも、冷静さの中に見えた天元の情に感化された。
怪しい者を教えれば必ずそいつは殺すと、まるで三津の事件を知っている口調に、楼主の昂る感情は涙と共に本音をぶちまけていた。
蕨姫花魁という怪しい遊女が北側の日の当たらない部屋にいる。そう楼主が告げた瞬間、天元の姿はその場から跡形もなく消えていた。
しかし気配を殺して向かった部屋は既にもぬけの殻だった。
そこは蕨姫花魁専用の部屋で、堕姫として使用していた部屋ではない。
だからこそ更に京極屋の奥底にある、必ず日光が入りこまない小さな小さな物置のような部屋を堕姫が一人で使っていることは誰も知らない。
そこで白梅と呼ばれる幼い禿が寝泊まりしていることも。
(…いない。人を狩りに出ているな)
天元は頭の回転が早かった。
だからこそ堕姫が狩りに出ていると悟った体は、既に京極屋の屋根の上を走っていた。
外に出ているならば外を探すだけ。鬼の気配を探りながら、何より明白な雛鶴の居場所へと向かえばいい。
もし雛鶴が存命ならば、鬼の情報を必ず持っているはずだ。
仮に手に入れられなかったとしても、夜明け間近になれば鬼は必ずまたあの部屋に戻ってくる。
その時こそ、己の手でかたを付ける時だ。