第29章 あたら夜《弐》
息つく暇もないくらいに、上も下もと杏寿郎でいっぱいに満たされるのは心地が良かった。
少し息苦しいくらいでいい。
熱が昂り、理性を揺さぶり、翻弄される。
自我の利かない体を感じる方が、生きていると思えるからだ。
「は…っんん…ふッ…あッ!」
唇の愛撫に没頭していると、こちらを忘れるなと言わんばかりにぐんと下から突き上げられる。
反り返った杏寿郎のものは抉るように狭い蜜壺の壁を擦り上げ、ぞくぞくと背筋が震え上がった。
突き上げられる度に跳ねる体は、逃がさないとばかりに逞しい腕で押さえ付けられる。
腰を掴まれたまま蜜壺を抉られれば、逃げ道のない快感は容赦なく蛍の脳裏を痺れさせた。
「杏…っそ、こ…ッあっまた…!」
「知ってる」
ずくずくと余裕のない律動に体を揺さぶられ、背筋の震えが瞬く間に快楽へと押し上げていく。
一度達してしまえば絶頂への波は容易かった。
幾度も重なり、次なる予感に嬌声に甘みが増す。
切羽詰まった声で告げる蛍に、杏寿郎も短い返事で頷いた。
「君のなかが気持ち良過ぎて…っ俺、も」
普段ならこんなにも早く杏寿郎が達したことはない。
それだけ余裕がないのか、本来の目的の為に抑制をかけていないのか。
蛍には図り切れなかったが、そんなことを考える気もなかった。
「んッ一緒に…っ」
腰を掴む手に手を添える。
今度は一緒に果てたい。
その想いを掌に滲む熱で伝えると、杏寿郎の律動はより一層激しさを増した。
「ひァッあ…!」
「っ蛍…ッ」
顎を掬うように掴まれ、頸の後ろに甘く噛み付かれる。
膝裏を抱いた腕が更に高く蛍の片脚を持ち上げ、子宮口に届かんと深く肉棒を突き入れた。
「あぅッ…あ──…!」
ぶるりと震える杏寿郎の腰から伝わり、蜜壺の奥で熱い欲が迸る。
注ぎ込まれる、血肉とは異なる色で染め上げていくもの。
その熱に侵される昂りを感じながら、蛍は二度目の絶頂を駆け上がっていた。