第9章 天からの贈り物
それだけははっきりと聞き取れるのに、中也さんの返事は聴こえない。
……聴きたくない。
少し横に移動してプリンやムースタイプのケーキの置かれるところにずれれば、私に合わせて周りのお姉さま方も動く。
苺?いやいやここはレモンとか!などといくつかのグループのお姉さま方の議論と一緒に、何も考えないよう色んな種類のケーキを食べた。
味なんて意識していない。
ただ分かるのは、今の自分の気分とは正反対に甘いということ。
「ちょっとお兄さん聞いてる?そこのスタイルいい貴方に話しかけてるんですけど〜?」
「お時間あるなら一緒の席で食べましょうよ!」
段々はっきりと聴こえるようになってくる媚びへつらうような甘ったるい声。
自分も普段、こんな風に鬱陶しくなるような声を出しているのだろうか。
甘えた声がこれ程までに気分が悪いものだなんて…違う、勝手に私が嫉妬してるだけ。
だって仕方ないじゃない、身体鍛えてるくせして本当にスラってスタイルいいんだもん中也さん。
低身長だなんてこと関係ないくらいに纏う雰囲気から素敵で……かっこいいんだもん。
「や、やっぱりそろそろお腹いっぱいになっちゃった?ごめんねいっぱい食べさせすぎちゃって…」
『!い、いえ!大丈夫ですよ、ここのやつみんな美味しいですし、お姉さん達皆綺麗で優しいからいくらでも食べられちゃいます!』
笑ってみせると少し間をあけてからもっともっとと差し出される沢山のケーキ。
しかしただでさえ多かったデザートだったのに急激に増えたその量に、流石の私もどこから手をつければいいのか分からず困惑していた。
そんな中、大好きな香りが鼻を掠める。
グイッ、と肩を引っ張られたかと思えば、そのまま私を抱くようにして引き寄せ、正面を向かせる中也さん。
「あ、やっと止まってくれた。ねえお兄さん、そろそろ話を____」
「どこ行ってたのかと思えば…何してんだよんなとこで。心配すんだろ」
少し屈んで私に目を合わせる中也さんにキョトンとして、少ししてから返事をした。
『お姉さん達がケーキ食べさせてくれてたの』
「ケーキだァ?」
少し先を見据えると、先程まで私に沢山ケーキを食べさせてくれていたお姉さま方。
それを見て何を察したのか溜息を吐く中也さん。
「どうりで見つからねぇわけだわ…」
『…いいの?そこのお姉さん達、呼んでるよ』
