第9章 天からの贈り物
説明をスムーズに進めるために、まずは蝶ちゃんの体質とあの子がどう足掻いても死にきれない身体であることから始め、そこから本人と中也に聞いた限りの実験内容やこれまでの経緯をざっくりと話す。
「まあこんな感じらしいのだけれど…さっきも話していた通り、あの子に行われてきた実験は酷いなんてレベルのものではなくてね。あの帽子置き場が助けに行った時も推定年齢は六歳前後…恐らく、殺された直後だったのだよ」
「そ、んな事が…そ、その科学者とやらは何を目的に!?」
「分からない。蝶ちゃんの体質から何かを見つけ出そうとしていたような記述はあったらしいのだけれど、それが何なのかも分からなくてね。見たことも聞いたこともないような事ばかりで、流石の私でもそこまではちんぷんかんぷんだったよ」
蝶ちゃん本人なら何かを知っているのかもしれないが、あの子に直接聞くだなんてそんな真似は死んでも出来ない。
「人の生命を何だと思っているんだそいつは…ッ」
「!…やはり国木田君には話して正解だったらしい。もしも彼女が国木田君が知っていると分かってしまったとしたら、ありのままの言葉を伝えてあげればいい」
「ありのまま?言葉を伝えるも何も、とっととそのモラルの欠片も存在していないような非道な科学者を軍警に引き渡した方がいいのではないか?」
国木田君の提案は最もなものだ。
しかし、それはしない…蝶ちゃん自身が最もしたくはない。
それを分かっているから何の心配もなく、あの子を嘲笑いながらやれ実験だ研究だとあの子を殺し続けたあの科学者が、私には…………中也には、許せない。
「そんな事をして、証拠にあの実験のデータを提出してみなよ。間違いなく世間のいいネタになるし、あの子に目をつける輩も寧ろ多くなる…その科学者の事については私もマフィアの方も、秘密裏に情報を探っているところさ」
「お前、いつもヘラヘラしているくせして白石の事となると必死だな?もうあいつが探偵社に来てから八ヶ月程だが…白石がお前を頼りに来たのを考えても、相当親密な間柄だったのだろう」
「うーん…まあ仲良くはしてたかな。だけどあの子が真っ先に私のところに来たのは、私に一番にすがりつきたかったからじゃないのだよ」
不審そうな国木田君の顔に笑いかける。
「一番甘えたい奴に甘える事が出来なくて、その次に思いついたのが私だったというだけさ」
