第9章 天からの贈り物
蝶ちゃんが好きだと言う人物のことを本当に好きでい続けていただなんてこと、この場の誰もが理解している。
しかし一部の鈍い何人かは、中也の気持ちの方には気が付いていなかったらしい。
「えっ……だ、太宰さん!?蝶ちゃんまだ片想いって…」
「うん、見てて焦れったくなってイライラしてくる程に実に面倒なのだよこの二人。蝶ちゃんのアピールに露ほども気付かなかったくせして最近ようやく自覚して、かと思いきや今まで鈍感な対応ばかりだったせいで今度は蝶ちゃんの方が鈍感に…」
想像しただけでも面倒だねと与謝野先生に突っ込まれる。
「でしょう?蝶ちゃんのためじゃなければ絶対こんな奴のためになんか動きませんが…やっと結ばれるんじゃないかって思った矢先に今回の戦いですよ。本当、面倒にも程がある」
やれやれと呆れていれば、未だ精神状態に支障をきたしている者が約二名。
谷崎君と国木田君だ。
「ち、ちち、蝶ちゃんがこの人に…っ?ああ、そういえば同棲もして……っていくつなんですかこの人!?男と二人一つ屋根の下だなんて」
「私と同じで二十二だよ」
「けしからん!けしからんにも程がある!!!白石はまだ十四だぞ!?年頃の娘と成人男児が…!!」
まあまあ落ち着いて落ち着いて、と二人を宥める。
気持ちは分からないこともないけれど、二人にとっても私にとっても、最早その生活が普通のものなのだ。
「二人は、それこそこのチビが十四の時から一緒に生活してきているんだ。そんな事を今更どうこう思ったりなんてしないさ……まあ、だからこそ面倒だったんだが」
「ちょ…ぼ、僕もう何が何だか」
「し、白石が…うちの白石が……ッ」
シャキッとしないか、親バカ二人、と与謝野先生に言われるも反応はなし。
「まあ、そういうわけなのだよ。で?組合との戦争が終わりさえすれば恐らく中也は蝶ちゃんに気持ちを伝えるだろうし、既に二人はお互い気づいていないだけで両想いなのだけれど……本当に面接と試験、するのかい?」
ピクリと全員が反応して私に顔を向け、瀕死だったはずの谷崎君と国木田君までもがむくりと私の方に顔をやる。
「「「いるに決まってる」」」
「ああ、うん…あの子も本当、愛されてるよ」
私と彼女との関係性といえばどのようなものなのだろうか。
妹…そう、なんだか妹のようなあの子。
妹に手は、出せないなぁ…
