第9章 天からの贈り物
映像の中の蝶ちゃんはやはり何かに怯えていて、中也に怪我をさせるつもりなんてと口にした。
その声に従って私も国木田君も中也の身体をよく見れば、蹴りを止めた足から血が垂れているのが目に映る。
《怪我!?んなもんどうだっていいんだよ!!答えろ蝶!!》
「こいつ、足にこんな深手を負って…?異能で無理矢理止めただなんて……!中也って、重力使いの中原中也か!!」
ようやく何が起こったのかを理解し始める国木田君。
そして自分は怪我をしてもすぐに治るからとまた自虐的な事を口走る蝶ちゃんに対して中也が返した言葉は、まずは誰かに無理矢理強いられてやったことではなかったのだなという確認だった。
これだけを見てとっても、中也の蝶ちゃんへの想い入れが並大抵のものではないだなんてこと、誰の目にも一目瞭然だ。
《勘弁してくれ…心臓に悪すぎるっ、頼むから俺にそんな事はさせないでくれ……!頼むからっ…》
そして蝶ちゃんの意思であったと確認してからは、蝶ちゃんの肩に触れてずるずるとしゃがみ込み、悲痛な声で懇願する。
こいつは思った事を誤魔化しきれる程器用なやつじゃあない…全て本音だ。
しかしそれでも引き下がりそうにない蝶ちゃんに一度見切りをつけて、蝶ちゃんに免じてと事務員の二人を餌にしたという説明を始める中也。
谷崎君からしてみれば卒倒ものだっただろうに、探偵社員が向かえば間に合うよう仕組まれていた事などを必死に蝶ちゃんに伝える様子に、結局は見入ってしまったらしい。
そして極めつけは、そこにすぐさま向かおうとした蝶ちゃんに向かってまた怒声を響かせてお前は行くんじゃねえと叫ぶ中也の声。
それから少しして映像は切れてしまったのだけれど、それを見ただけでもあいつが蝶ちゃんの事をどれ程想っているのか、どれ程大切にしているのか、少しくらいは誰にでも分かるようなものだった。
「こんな風に大事にされてみたい…自分の身体に負担をかけてまで止めるだなんて、愛ですわ!!」
「素敵帽子さんって勝手に呼んで笑ってるけど、この人相当な手練ですよね。それに何より蝶ちゃんの事が本当に大切みたいですし」
谷崎兄妹の声にわいわいとなる探偵社員達。
「…確かこいつはマフィアの五大幹部の一角だっただろう。それがどうして、こんなにも白石に執着を?」
「あー、分かんなかった?…二人が両想いだからだよ」
