第9章 天からの贈り物
「ありゃあ、こいつ異能力まで使って…ほんっとに蝶ちゃん以外になら女性であれ興味は無いんだねぇ」
国木田君とは対照的に私は焦りの色を見せもしなかった。
理由は至極単純な事。
「な…ッ?あれだけの勢いで、しかも異能まで使って加速してきていて……それがどうして、蹴りを出した後に止められる?」
「分かってないなぁ国木田君。そんなの単純で簡単で、息をするように当然な事に決まってるじゃあないか」
私の声で国木田君以外の顔が微笑ましいものになる。
「だが普通に考えてもみろ、こんな状態で足が止められるわけが…」
「止められるかどうかなんてこのチビには意味を成さない言葉だよ。自分がどんな状況になっていようが、目の前に蝶ちゃんが現れれば等しくそれは止めなければならないものになる……止められるかどうかなんて関係ない。“止める”んだよ、止めなくちゃいけないんだ」
「い、いや、だがこんな状況下で白石の姿が見えていたとも」
なかなか整理のつかない国木田君の頭。
仕方ない、信じたくない気持ちは分からないでもないが、あいつは悔しい事にこの世で一番蝶ちゃんの事を想ってる…私はそれをよく知っている。
「そんなに信じたくない気持ちは分かるけど……はい、音声入れたからもっかいここから見てみなよ」
パソコンを弄って音声データも同時に流し始めると、再び蝶ちゃんが間に入ったところまで流れた。
そしてその時に、やはり確かに私の大嫌いな声が叫んでいた。
《やめてっ!手、出さないで!!》
《蝶!?あんたいったいどこから!!》
《蝶…?…!馬鹿、避けろ!!!》
響いた声はやはり必死なもので、ちゃんと蝶ちゃんだと認識しているものだった。
そしてやはり蝶ちゃんは動かなかったのだが、中也の足はしっかり、すんでのところでピタリと止められる。
そして何やら中也の足を見て怯え始める蝶ちゃんに向かって響き渡る怒った声。
《……っの、馬鹿野郎!!なんでそこに入ってきた!お前、俺が足を止めなかったらどうするつもりだった!!!》
「こ、この男は本当に白石に気がついて…!?」
国木田君の驚きに続けてまた中也の声が響く。
《俺が異能で無理矢理止めなかったら…っ、お前は!!俺にお前を蹴らせるつもりだったのか!!?》
「あーあー、またこんな事言ったら蝶ちゃんが……あーやっぱり泣かせちゃってる」
