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第9章 天からの贈り物


珍しい、本当に珍しい。
持病のスイッチが入ってるわけでもなさそうなのにここまで引き下がらないどころか自分から甘えに来るなんざ、更に輪をかけて珍しい。

なんだよ、デレ期とやらに入ってんのはこいつの方なんじゃねえのか、なんて頭の中で妙な考えに辿り着きながら、あやす様に抱きしめてやる。

『だって、知ってる人皆、綺麗で可愛いんだもん…知らない内に他の人のとこに行っちゃやだ』

夕方とは百八十度反対の言葉を紡ぐ蝶。
知っていた事ではあったが、これが結局こいつの本音だ。
なんて可愛らしいわがままだろうか、俺が蝶以外を相手に惹かれるようなことなんざ、どう考えてもありえねえ事なのに。

「行くかよ、俺が。さっき約束したばっかだろ?」

『!……ん、』

「な、心配すんなって。つうか俺、お前以外の誰かにベタベタされんの気分悪いんだよ」

知ってると思うが、と言いながら、蝶の目に手をちらつかせる。

「普段から素手で触れる奴なんか蝶くらいのもんだろ」

『…それでも嫌なものは嫌。誰かとくっついてたら私がすぐに消し……怒りに行くからね』

「今さらっと消すっつったよなお前!?すんなよ!?万が一んな事あっても絶対ぇお前の勘違いだから!!」

流石に消される相手が不憫でならねえ。
こいつは消すっつったら本当に消せるから更に不安だ。

まあでも、普段の状態でこういう本音も素直に話してくれるようになったあたり、よほど今日の俺の気持ちが嬉しかったんだろう。

『中也さんが他の人にくっつかなかったらい……っ』

頬と額にキスをしてやればすぐにもっと赤くなって、茹で蛸みたいになった蝶。
そろそろ見慣れてきたのだろうか、遂に周りの奴らも何も言わなくなった。

「俺が他の奴にこんな事するかよ」

『〜〜〜っっ!!!ま、またこんなッ…も、もう行く!!じゃあね中也さん、どうせすぐに来ちゃうんだろうけどバイバイ!!!』

逃げるように扉を作る蝶に、えっ、もう行くの!!?と焦って支度をするトウェイン。
本当に突然な気はしたが、まあだらだらしてうじうじすんのもお互い性にあわねえのが分かってるし、これくらいが丁度いい。

首領や部下にお礼を言いながら扉を開けて、トウェインを先に外に出す。

『じゃあね中也さん…ッ、無茶だけしないで』

「!…お前もな。後忘れ物」

『え……ん…っ…』

もう一度深く、キスをした。
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