第9章 天からの贈り物
膝をついたまま、蝶に服従を示すような姿勢のまま…しかし蝶の頬も頭も俺が持って、主導権は俺が握っているような、そんなキス。
深いところまでなんざしなくていい。
結局は気持ちのこもったキスが、お互い一番気持ちが良くて幸せなんだ。
俺の手で顔は周りから隠れているからか、蝶は身体をビクつかせて俺にされるがまま、何度か角度を変えて行うキスに応えてくれた。
『ッ、ハ……っ、ち、中也さんのキス魔…ッ』
「俺もわがまましておこうと思ってな?」
『いつもしてるくせに…っ!じゃ、じゃあねッ!!』
「おう…すぐに迎えに行ってやるから待っとけ」
小走りになって俺の元から離れる蝶を微笑ましく見送りながらも、強い気持ちをこめて静かに言った。
すると扉の外に出てから、聞こえていたのか閉める前にこちらを振り向いて、赤い顔のまんま口を開く。
『待ってる……大好きだよ』
「!蝶ッ…」
そのまま言い逃げるようにして扉を閉めて消してしまい、そこにはやはり一羽の蝶が舞うだけだった。
「…お疲れ様、中原君。君も辛い部分はあっただろう……まさかあんなに君と蝶ちゃんが進展してるとは思ってもみなかったけど」
「首領……いや、すんません。でも組合の方で困ってる奴がいるとかで、あいつやっぱりこっちにいるのも心苦しいらしいんすよ」
「あの子の性格じゃあねえ。さっきの彼もいい子だったし、余計に無下には出来ないんだろう」
首領の言葉にそうっすね、と返して立ち上がる。
「それで?何やら輸血が終わってから、蝶ちゃんは更に君に懐いていたように見えたが……何か嬉しい事でも言ってあげたのかい?輸血中に寝ていた事もあるし」
「…まあ、俺が嬉しく思って、それをそのまんま伝えただけですよ。詳しい事は俺らの秘密です」
「おお、言うようになったねえ。関心だ……これなら蝶ちゃんも救われそうだね。でもやはり彼女がいないのは寂しいだろうし、どうだい?うちのエリスちゃんや、それこそ樋口君や銀君なんて可愛らしいと思うが」
首領のわかり易過ぎる愉快な冗談に一瞬叫びそうになったが、すぐにプッ、と笑って答えた。
「すんません、あいつは他と次元が違いすぎますから。それに俺、ただの女にそういう目で見れねえみたいなんで」
「本当に何があったのやら。余計に一途になったね蝶ちゃんも…中原君も」
「俺はいつでもあいつ一筋です」
