第9章 天からの贈り物
「……お前は俺とキスしたら寝ちまう習慣でもついてるってのか?ったく………可愛い顔見せてほしかったのによ」
悪態をついて蝶の頬をフニフニ指で突っつくと、蝶は寝惚けても俺の事を考えているのだろうか、嬉しそうな顔をして俺の手に擦り寄ってきやがった。
「…………まあ、こんな顔も悪くねえな」
悪くない………………どこが悪くない、だこのヘタレ野郎が!!
何組合から助け出した時なって昼間に言ったことを言い訳にして告白し損ねてんだよこの馬鹿野郎、今のどう考えてもすっげえ良いタイミングだったじゃねえか!!!
寧ろこんだけ色々本心晒しまくった後になってから告白する方がよっぽどハードル高ぇぞ俺!?何してんだよマジで!!
年上面して偉そうな事ばかり言う俺だって流石に余裕はない。
思い出したらなんてクサい台詞だ、俺はいつからキザになったよ、んな奴あの青鯖だけでもう十分で…
そこまで出してるくせして考える事を放棄した。
そしてそこから頭を切り替えるようにして、蝶の話を思い出す。
そこまで教えられるまで知りもしなかった蝶の事。
まだやはり言いにくい部分はあったのだろうが、ただの人間であれ何であれ、あいつがあいつで生まれてきてくれたからこその今だ。
蝶の口ぶりからしてみれば本当に自分は普通の人間ではないんだと、何かを知っているようだったが…それでも人間ではないと言っていたわけじゃあない。
身体のつくりも貧血になるのも、五感があるのも全てあいつがれっきとした人間であるからだ。
普通じゃないのがこいつにとって苦しい事であったのは確かだろうが、逆に言えばそうでなけりゃ俺は蝶と出逢うこともなかったというわけだ。
普通じゃねえ人間…いいじゃねえか、上等だ。
こんだけ蝶が長い年月をかけて、その上で一番だなんて言ってくれた…誰かに引き渡してたまるもんか。
俺の一生を…いいや、一生なんかじゃやはり足りねえ。
いつになってもあいつが自分を責めねえでいられるように…頭の片隅にでも俺をおいて、いつになっても笑って生きていけるように。
「お前のせいで益々好きになっていっちまうじゃねえか…俺は独占欲強いのにどうしてくれんだっつの」
目の前で俺に安心して、幸せを感じて嬉しくなって、気持ちよさそうに眠る少女をどうしようもなく愛しく感じる。
もう一度だけキスをして、俺も少女のあたたかさに幸せになった。
