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第9章 天からの贈り物


『うん…あの蝶は移動する時の手段だけじゃなくってね?通信機みたいな役割を果たすこともあったの。でも何にも、誰からの連絡もなかったでしょ…様子を見に行くことすら出来ないんだぁ……』

「蝶…」

『ふふ、あの世界なら…あそこだけなら、唯一私の大事な人達がまだちゃんと生きてるはずなのに、帰れないの。私の蝶は堕とされちゃった蝶だから…っ、勝手に生み出されて勝手に利用されて、それで……そこを滅ぼしかけた危険な存在だって』

「蝶、もういい…お前がただ危険な事をするような存在だなんて思っちゃいねえ、俺がちゃんと分かってる」

中也さんの指が優しく涙を拭って、それから私の頬に手をあてる。
ああ、こういうことしてくれちゃうからずっと一緒にいたいって思っちゃうのに。

ずっと一緒になんていられないって分かってるから、人と関わりたくなんてなかったのに。

『中也さ…っ』

「……教えてくれただけでも嬉しかった。お前の口ぶりからしてみたら、やっぱり俺にも話したくねえ事はあっただろうし…もう言わないでいい、ありがとな」

『ん…ねえ中也さん、私の事、見捨てない?独りに、しない?』

「見捨てねえよ、見捨てろって頼み込まれても聞いてやらねえぞ」

中也さんの顔は笑顔になっていた。
だけど流石にスケールの大きい話をしすぎたせいか私の事を考えすぎてか、少し辛そうな顔になっている気がした。

『…私ね、元のところでも異質な存在だったの。人みたいなのにさ、全然人じゃないって分かってるの……本当に普通の人間じゃないの。それでも一緒にいてくれる、?それでも、私といてくれる?』

「当たり前だろ、なんで今更お前から離れなくちゃならねえんだよ。お前は俺の中じゃあ全然普通の人間なんだが…まあそうじゃなくてお前のいう異質な存在だったとしてもな?」

中也さんがそこでようやく少し間を置いたため、気になってチラリと中也さんの方に目線を上げた。

『そうだとしても…なに……?』

「ああ、いや…お前からしてみりゃ辛い事だろうけどよ。俺からすればすっげえ幸運だったなって。普通なら今こうやって話すことも、出会うことすらなかったような奴が、俺んところにいてくれて…俺の一番の存在になってくれてんだ」

『……中也さんが私の一番なの』

「プッ、そうだな。…だからよ、お前がちょっと特別な存在だったから…俺は今、幸せなんだ」
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