第9章 天からの贈り物
昼間出会っていた段階で、執務室の紅茶の茶葉と珈琲のストックが切れているのは分かっていた。
そして中也さんの最近の帰宅時間や仕事の空き具合を考えてみても、丁度この位の時間帯にここに来るかここから出ていくかするだろうと目を付けていたのだ。
意外と自分で本格的にやりたい人だから。
「い、いやいや聞いてないんだけど、てっきりインターホン押したら超絶不機嫌な声で応対されるもんだと思ってたんだけど」
「なんで手前がこんなところに…!蝶ッ!?」
慌てたようにこちらに駆けつける中也さんに顔を見せたくなくて、トウェインさんの方に顔を向けた。
「何やらすっごい貧血らしいんだよ、本人は軽いって言ってたけどそんな風に見えないし…色々と説得して君の所に連れてこさせてもらったとこ」
「貧血ってお前ッ…そんな顔色して軽いなんて言う奴があるか馬鹿!!とりあえず首領を呼んで……」
『…するの?しても、いいの?』
掠れた声で振り絞った。
怖かったのに、何も聞かずに私を心配してくれる中也さんが、どうしようもなく大好きだった。
だからこそ余計に、怖かった。
「お前がそんなんなのになんで俺が助けねえんだよ!?馬鹿な事ばっか言ってないでとりあえず家に___」
『こんな変な身体を楽にするために血なんか分けて…いいの?なんでそこまでしてくれるの?』
鍵を開けようとした手が止まったのか、物音がしなくなった。
「蝶ちゃんまたそんな…っ」
「……何が変な身体だ、昼間っから変な事ばかりほざきやがって。身体ん中に無いもんがあるからなんだ、お前はその分他にねえもんをいくらでも持ってんだろ…個性みてえなもんだ、人間らしくていいじゃねえか」
中也さんの声に、手の震えがおさまった。
痛いくらいに握りしめていた手から、力が抜けた。
「血が足りなくて貧血でしんどくなって、そんな身体のどこがおかしい?普通の身体だ、普通の事だ。お前の身体が変だなんて思った事、ただの一度も無かったさ……ほら、お前が連れてきたんならそいつは大丈夫なんだろ?とっとと入って横んなれ」
頭に、自分から遠ざけたはずの中也さんの手が優しく触れた。
すぐに鍵が開けられたのかトウェインさんも中に入っていき、中也さんに促されて私のベッドに横にならせる。
中也さんは首領に今の状況を連絡するためリビングにいる。
人間らしい、普通の事…____
