第7章 克服の時間
カルマ君がピタリと足を止める。
「どうしたぬ?攻撃しなくては永久にここを抜けれぬぞぬ」
「どうかな?あんたを引きつけるだけ引きつけといて、その隙に皆がちょっとずつ抜けるってのもアリかと思って」
グリップさんはそれをまともに受け取ってはおらず、冷静な目でカルマ君を見る。
「…安心しなよ、そんなコスい事は無しだ。今度は俺からいくからさ…あんたに合わせて正々堂々、素手のタイマンで決着つけるよ」
カルマ君が攻撃態勢になって、好戦的な表情になる。
あれは…何か企んでる顔だ。
「良い顔だぬ、少年戦士よ。お前とならやれそうぬ、暗殺稼業では味わえないフェアな闘いが」
カルマ君はグリップさんに走って向かい、飛び蹴りを入れる。
あれは多分私のを参考にしたのだろう。
中也さんにはたまに仕掛けていたから。
カルマ君の蹴りがグリップさんの足に当たり、相手が背中を向ける。
そしてカルマ君はそこに攻撃しようとするが、グリップさんは突然、カルマ君にガスを噴きつけた。
「一丁あがりぬ。長引きそうだったんで”スモッグ”の麻酔ガスを試してみる事にしたぬ」
ガスを浴びたカルマ君は、気を失ってフラッと倒れ込む。
「き、汚ぇ!!そんなもん隠し持っといてどこがフェアだよ!?」
グリップさんはカルマ君の顔面を掴んで、そのまま持ち上げた。
『…』
「俺は一度も素手だけとは言ってないぬ。拘る事に拘り過ぎない…それもまたこの仕事を長くやってく秘訣だぬ。至近距離のガス噴射、予期してなければ絶対に防げ…ぬ!!?」
皆が絶望した顔を浮かべたその時。
ブシュッと、カルマ君からグリップさんに向かって、ガスが噴射された。
「な、なんだと…っ」
「奇遇だね?二人共同じ事考えてたぁ」
出た、今日一番のゲスい笑顔。
「何故、お前がそれを持っているぬ…っ、しかも、何故お前は俺のガスを吸ってないぬ!!」
ナイフで襲い掛かられるのをカルマ君は避け、グリップさんの腕を掴んでナイフを落とす。
「ほら寺坂早く早く!ガムテと人数使わないと、こんな化けもん勝てないって!」
心の底から楽しそうに言うカルマ君に、寺坂君は溜息を吐く。
「へーへー…てめえが素手で一対一の約束とか、もっと無いわな」
やってくれた、流石にこうなるなんて予想してなかったけど、最高だよカルマ君。
まさか私と同じ事を考えてただなんて。
