第7章 克服の時間
「……カルマ…っつうか悠馬の携帯だったな。このまま繋いでやっててもらってもいいか」
「!はい」
「すまねえ。今度、また何か奢るわ…」
中也さんが港に到着したのか、電話の向こうからは船のエンジン音や波の音が微かに聴こえる。
『中也さん…本当に来る?来てくれる…?』
「ああ、もう首領にも許可は取った!異能使って飛ばして行ってやるから!」
「え、異能…?」
「異能って……え!?」
中也さんは来てくれる…来てくれてる。
脳に覚え込ませるように反復して、縋りつくように、カルマ君の方に顔を隠したまま向けた。
「!…もう、俺が触っても大丈夫?」
コク、と頷いて、カルマ君の手が優しく頭を撫で始める。
こんな優しい手を、私は拒絶してたんだ。
私に歩み寄ろうとしてくれるこの手に、触らないでなんて、言っちゃったんだ。
『……ごめん、なさい。カルマ君、ごめんなさい…』
「いいよ、蝶ちゃんが生きててくれて皆嬉しいから」
カルマ君の言葉にまたブワッと涙が溢れてきて、声がまた震え始める。
私が生きてて、嬉しいの?
蝶が生きてて……嬉しいの?
いつかの中也さんと同じ事を言う。
カルマ君は私の事を全ては知らないはず。
でも、この言葉が嬉しかった。
中也さん以外の人に…中也さんのいないところで、白石蝶という存在を認めてもらえたような気がして。
『……ん、手、離して………これ、やっぱり怖い…から』
「蝶、もう馬鹿な事言わねえな?あんな事言って、俺を悲しませねえでいてくれるな?」
『!…うん、言わない。…中也さん、大好き』
「…ああ、分かってる。俺もお前と同じだからな」
中也さんが私を好きなのは、私が中也さんを好きなのと同じ事。
私がいなくなって中也さんが悲しくなるのは……中也さんがいなくなって、私が死にたくなるほど悲しくなるのと、同じ事。
『はい…ねえ中也さん、着いたらこれ、また壊して?……また、いっぱい一緒にいようね』
「当たり前だ…そろそろ電波が悪くなりそうだ。蝶、お前それつけられたんなら、出来るだけカルマの後ろにいろ。そいつなら、守ってくれんだろ」
手の拘束を解かれてカルマ君をチラリと見れば、ん?と微笑んでくれた。
「了解、任せてよ中也さん。中也さんが来るまで、絶対怪我させたりしないから」
『…私にまだ勝てないのによく言うよ』
「はは、その通りだ」
