第7章 克服の時間
「簡単にって…そんな、気持ちは理解しないこともないけど、死ぬなんて事が簡単に出来るわけが…」
「これ以上は蝶の許可なしには説明出来ねえ…っ、せめてそいつの手を拘束するだけでもいい。手を使って首なんかでもしめられたらたまったもんじゃねえ…!」
中也さんが言って少ししてから、タオルで顔の上の手を纏められる。
『!…な、何っ?何でこんな……!やだよ中也さんっ、なんであいつと同じ事するの!?』
「同じじゃねえっ、そこにいる誰かがお前を痛めつけたか!?誰かがお前を利用したか!!」
『してない…っ、けど中也さんさっき言ったじゃない、気絶させろって……手、拘束しろって!!』
分かってる、中也さんが私を痛めつけるためにこんな事をしているわけじゃないだなんてことくらい。
タオルの上から麻縄を巻き付けられて、いつもの力が出せない私は、腕の自由を失った。
舌を噛み切って自殺するほどの勇気は…あれに耐える程の勇気は、もうない。
一度経験して、二度とやりたくないものだ…一思いに、殺して欲しいのに。
そしたら、楽になれるのに。
「……っ、そうでもしねえとお前、俺の前からいなくなっちまうだろうが!!!お前は誰よりも頭もいいだろ!命の重みだって知ってるはずだ、痛いくらいに分かってるはずだ!!」
それが、何で自分の為には考えられない!?
中也さんの声に、死にたい、楽になりたいと言っていた口が、大人しくなる。
『…だって私、いなくならないじゃない。いなくなれないじゃない』
「じゃあ別の方向から考えろ…白石蝶がいなくなる、そしたら俺はどうなる?自分の立場になって考えるんだ……お前、俺が殺してくれって頼んで、殺せるか?俺がいなくなったらどう思う?」
白石蝶が、いなくなる。
中也さんに、必死に言われた言葉だった。
白石蝶は今の私。
前も次も、それはただの生まれ変わり。
……蝶が死んだら?
中也さんが、死んだら…?
『…………や、だッ…』
「俺がいなくなって、平気でいれるか?殺してくれって言われて、何とも思わねえでいれんのか…?」
『やだっ……やだ、中也さんがいなくなっちゃうの…やあッ…!』
腕に優しく巻かれたタオルに涙を吸わせる。
「な…嫌だろ。俺だってそれと同じなんだ…俺が行くまでちょっとの我慢だ、後はまた、好きなだけ一緒にいてやるからよ」
エンジンの音が聞こえた。
