第4章 新しい仲間と新しい敵と…ⅱ
「お前、今日どうしたい?車で横浜まで乗せてくのは、些か抵抗があるんだが」
首元に息が当たっているからか耳元で喋っているからか、はたまた単に照れているのか。
少し呼吸が不規則になって目を潤ませて俺を見る蝶に強く抱きしめたい衝動に駆られるが、今日はぐっと堪えて我慢する。
『中也さん、こっちでのお仕事いつまでなの…?』
「仕事?あー…あと二、三日ってところだ。宿泊費も出てるから、そのへんは気にすんな。ただお前が今日帰りてえなら、俺はそれでも構わねえ」
『……じゃあ東京にいる。家帰っても、中也さんに満足にくっつけないんじゃ、帰ってる時間勿体ない』
俺の上着を引っ張って可愛いことを言ってくれる。
そんなことすっから、すぐに手を出すのを堪えんのに必死なんだぞこっちは。
「帰ってる時間勿体ないとか…まあ分かったよ、またどっかに泊まろう。担任に上手いこと固定具付けてもらってたから、多少は動けるか?」
『うん。壁使って骨の形は作ってあるし、ちょっとくらい動け…っ!?あ、ああああの!!?』
自分の骨を形取って痛みを和らげるという発想はやはり蝶独特のものだったが、それならば移動させても大丈夫そうだと思って抱き上げた。
そっと横抱きにして抱き上げればまた昨日のような顔をして恥ずかしさに耐えている蝶。
こんな顔にまで理性が揺さぶられる俺は、相当こいつに溺れている。
「…取り敢えず車に乗せるから、大人しくしてろ」
『で、でもこんなっ…』
「後ろじゃお前、腹に負担かかんだろ」
そう言えばよっぽど恥ずかしかったのか、俺の上着で顔を隠した。
今外套着てねえから、まあ全然隠しきれてないんだが。
保健室から出て校舎を出ようとすれば、後ろから烏間さんや餓鬼共が集まる気配がした。
「おお、手前らか。邪魔したな、これからもこいつの事頼むわ」
はい、と良い返事も聞けたが、そこから口々に蝶への礼が聞こえる。
ごめんは言わせなかった。
聞こえるのは、ありがとうだけ。
蝶はそれにまで恥ずかしくなったのか、はたまたこの状態が恥ずかしいのかは分からないが、顔を少しだけ後ろに向けて、小さく手を振った。
『ん…またね』
俺の体から顔を覗かせて、恥ずかしがってこんな事を言われてしまえばさぞ可愛かろう。
男共からも女からもそのような反応が見受けられたが、俺はただ一人優越感に浸った。
