第4章 新しい仲間と新しい敵と…ⅱ
「手前らが気にしているであろう蝶の容態だが、見た目よりは症状はマシそうだ。だから…」
言いかけて、全員からの視線でそれをやめた。
「中原さん、分かってます。あんだけ中原さんが取り乱してたって事は、結構な怪我だったんすよね」
「……はあ。これ言ったの、あいつには絶対悟らせんなよ?変な所で罪悪感もってばっかになるからよ」
どうせこれで誰かが喋れば、自分のせいで心配かけただとか雰囲気を暗くしたとか考えるんだ、あいつは。
真剣な、いい目をした餓鬼共…そして三人の大人に向かって、正直に蝶の状態を説明する。
「俺は医者じゃねえから、もっと症状は軽いかもしれねえし、重いかもしれねえが。恐らく二、三本程、右の肋骨が折れている。後は耳が少し聞こえにくいくらいだが…あいつの場合すぐに良くなる」
言い終えれば、やはり教室に驚きの声が漏れる。
どんな状態なのかを想像して顔を青ざめる奴や悔しそうにする奴、そして冷や汗をかく奴。
一般の餓鬼共にとっちゃあ当たり前の反応だろう。
「骨、折れてるって…そんな強い蹴りをっ」
「……大丈夫だよ、あいつは怪我の治りが早い。数日でぴんぴんするようになるさ」
数日でと言えば、事情を知らねえ大半の奴らはまた驚いていたが、少しだけ落ち着いた様子の奴らが多かったように見える。
「でもあんなに一方的なの見てたら、悔しいのに向かっていくような勇気が出なくて…動けなかった。悔しかった」
主に男共が、悔しいと。
助けに入りたかったと言った。
「いや、動かなくて正解だったと思うぜ。手前らに攻撃した時と蝶の時とじゃ、比べ物になんねえくらい力の差があったからな。もし手前らが蝶が受けてた攻撃を受けてたら、良くて脳震盪からの気絶…悪けりゃ複雑骨折か粉砕骨折は免れなかっただろ」
蝶には、あれでも直接俺が色々と仕込んだところもある。
今回だって、できる限り攻撃を躱して流して、受け身も防御もちゃんとできるようになっていたからこそ、意識も保っていられたのだ。
「蝶には一通りの防御術を仕込んであったからな。手前らも、興味があったら担任か烏間さんにでも習っておくといい。小さな事だが、格闘技に優れる奴を相手にする時の最低条件だ」
今日こんな事があったからこそ、心の底からよかったと思う。
念のために念のためにと、あいつに身を守る術を教えておいて。
