第4章 新しい仲間と新しい敵と…ⅱ
「ま、とりあえずお前は大人しくじっとしてろ。じゃねえと治るもんも治らなくなんぞ」
『はあい…』
「んじゃ、俺は教室の方に用事があるからそっちに行く。あいつらもお前の事心配してるだろうからな」
蝶と一旦別れて、保健室から退室した。
一人になった途端に、胸の奥が苦しくなる。
いくら仕事の邪魔をしないようにしたかったからとはいえ、俺がもっと早くに入っていれば、あんなに身体を痛めつけられることなんてなかっただろう。
強いのは強いが、蝶だって女…それにまだ十四、五の子供だ。
腹を見た時に見えた色が、手をあげられた時に苦痛に歪んだ蝶の顔が、頭の中から消えてくれねえ。
痛々しい程に腫れていたあの皮膚の様子や冷や汗のかき用から、絶対に骨の二、三本は折れているだろう。
最終的に折れてしまったのはあいつの行動の結果だろうが、それでもあの男を許すことが出来なかった。
こんな所じゃなく、横浜だったら。
体育で訓練中なんかじゃなく、警戒を高めている時であったなら。
能力と銃を使えたなら。
何も無い状態で、恐らく最初に膝蹴りを腕で受けた時には、既に力だけじゃあ敵わないと悟っていたはずだ。
それでも、ああするしかなかった。
あいつは真面目で怖がりだから、任務を放棄することも餓鬼共の前で力を使う事も、出来なかった。
「……情ねえのは俺の方だよ…くそっ、…」
保健室の戸の前で力なく座り込んで、ただひたすらに自分にイライラしていた。
「あの、な、中原さ…」
「ああ!?……って、何だ手前らか。すまねえな、怒鳴っちまって」
大人気ねえ、自分の寵愛する少女の痛々しい姿を見ただけで、こんなに感情を乱れさせるとは。
「い、いえ…とりあえず、教室に」
「ああ…そうだな。陽人と神崎、手前ら一応蝶が庇いはしてたが、どっか打ったりしてねえか」
間に入る時に結構強く庇っていただろうから、そっちに意識をやって精神を安定させる。
「は、はい!私の場合は抱えてもらってましたし」
「俺も…それより白石の方が心配っす。それに、元々俺のせいで最初……」
「そんなこと言うんじゃねえ、今回のは誰のせいでもねえんだよ。陽人、蝶の前でだけは絶対に言うんじゃねえぞ…」
「…はい」
自分のせいで攻撃を被る事になってしまったなんて思っていたって、蝶は喜ばねえんだよ。
餓鬼共に促され、教室の中へ入った。
