第4章 新しい仲間と新しい敵と…ⅱ
私が無事で良かったと彼は言った。
中也さんに上半身を支えられて座っていると、必然的に彼の姿が目に入る。
呼吸が安定してきて、視界が少しだけ鮮明になると、少し遠くで屋根に乗っている中也さんの帽子と外套…そして、傷だらけになった中也さんの身体が見えた。
『ち、中也さん…怪我がっ』
また、目が合わせられなくなって、俯きがちになる。
「あ?こんなもんかすり傷程度だ、気にすんな」
『でも私が…』
「お前、これ絶対に“移すな”よ」
どきりとした。
なんでこの人は…中也さんだけじゃない。
探偵社の皆にしても烏間先生にしても、私に移せば無くなるものなのに。
私が中也さんを、傷付けてしまったのに。
『本来私が受けてたはずのものじゃないですか、中也さんのものじゃない。なのに、何で…っん、!』
中也さんがまた私を抱きしめる。
今度はさっきみたいに強いものじゃなくて、優しく、壊れ物を扱うようにそっと。
まだ抵抗感が少しとれないのか、肩に力が入るのが自分でも分かる。
「どんだけ馬鹿なんだよお前は、蝶に…痛い思いをして欲しくなくて入ったんだ。そんな事、絶対させねえ」
『私は痛くなるだけなんですよ?傷はすぐに、治るんですよ?中也さんが辛い思いなんてしなくても』
「誰が辛いなんて言ったんだ、それ以上言ってみろ。今度は気絶するくらいのをしてやんぞ」
気絶するくらいのものと聞いて、先程まで自分が何をしていたのかを思い返し、体が中也さんから離れようとする。
しかし、勿論中也さんは私を離してはくれなかった。
『ぁ、ああ…わ、たしっ……何で、中也さんあんな…』
「……あんなって、どんなだよ」
『へっ!?だ、だからっ………その…』
言葉や体と共に、唇ももじもじさせて、その場をやり過ごそうとする。
けれど中也さんは私をじっと見ているだけ。
抱きしめられた姿勢のままだから、顔が近くて余計に頭がクラクラする。
「ん…?ちょっと残ってんな」
『んっ…ふぁあ、っ…』
唇に唾液が残っていたのか、中也さんがそこを指でなぞって唾液を拭い、それを舐めとった。
『な、ななっ、中也さ、そんなことっ!?』
「勿体ねえだろうが。そんな顔俺以外の前でなんか誰にも見させねえよ……それに、さっきは蝶が飲んでくれたんだからな」
思わず生唾を飲んで、両手で顔を隠した。
なんて事をしてたんだ私は。
