第26章 帰郷
思い出すのは、初めてそれを手に入れた日。
いや、手に入れたというよりは…気がついたと言った方が正しいか。
私は、霊子が満ちてさえいれば、自身に埋められた核の力と元々備わっていた斬魄刀としての能力によって、喜助さんの卍解と同等かそれよりも更に本来の卍解の最終形に近しい力を扱うことができる。
それである日、私はたまたま、古びてボロボロになっていた刀を見つけてきた。
何故か吸い寄せられるようにそれに触れれば、どうしてか酷く澄んだ気持ちにさせられる。
そんな不思議な刀を持ち帰って、まず私はそれを綺麗にした。
手間暇かけて、能力だけに頼らずに…そうして磨いて研ぎあげた刀を、聖水に浸しておいたのだ。
私は元々、自分で水蒸気などの水を操るのも得意だったから。
気を感じてそれを扱うことが得意だったため、下手に誰かに触れられたりしないようにと…誰も水に浸かった刀など使いたがらないだろうからと、そうしておいた。
しかし、そんなある時、私は後に自分の師匠となる男の斬魄刀に触れる機会があった。
最初は事故のような出会いだったような気がするが…それでも、直接この身体でその刀に触れて、何かを感じ取った。
そして不思議な気分のまま研究室に戻ると、なんとその刀を浸しておいた水が、水滴もなく無くなってしまっていたのだ。
それに少し恐怖しつつも、残されていた刀に手をかけると、私はすぐに精神世界へと引き込まれ…その斬魄刀の名を知った。
心を通わせ、その場で相手を屈服させ…奇跡的にも始解と共に卍解まで習得した私は、すぐに喜助さんに知らせようと話を持ちかけ、その反応を心待ちにしていた。
……結論から言えば、心待ちにしていたその時はそれから百十年の間、訪れなかったわけなのだが。
「…なぁにシケた面してんだよ」
『…いつから来てたの?』
「ついさっき。…どうした?えらくへこんでんじゃねえか」
私の隣に腰掛けるその人に、今はどうしようもなく縋りたかった。
『私…喜助さんに酷いこと言っちゃったの。喜助さんが言われて一番辛いこと言っちゃった』
「そうなるくらいに辛かったんだろ?大丈夫、あの人はお前のことよく分かってる。また仲直りすりゃいいさ」
仲直りなんて言葉に置き換えてしまうこの人は、どうしてこうも私を楽にさせてくれてしまうんだろう。
沢の上の大きな木の上で、彼にそっと抱きついた。
