第26章 帰郷
『…、…やだ、そっち行ったら離れられなくなるから』
「何言ってんだよ、好きなだけくっついてろっつってんだ」
「あらら、流石旦那さん器が広い…行ってもいいんだよ?」
喜助さんの声にピク、と肩が震える。
ゆっくりと手を離して、中也の方へと歩いていけば、彼の方から両手を広げてくしゃりと笑顔を向けられた。
私は貴方の笑顔に、とことん弱い…
吸い込まれるように正面から抱きつきに行くと、軽々とそれを抱きとめて涙を拭われる。
「な、ちゃんと我儘言ってみるもんだろ?お前の思う程度で俺は離してなんかやらねえよ」
『ッ…寂しかった、?』
「…少しな。けどお前の方が寂しかったろ?ずっと…こっちの世界にいた頃から」
『!!、…どこまで、知って…?』
「ここまで来りゃ勘でもあるさ。あとはお前の人間性を見た勝手な判断だ」
ギュウ、と少し力の入る腕に安心する。
…敵わない、本当に。
『夜一さんとかにデレデレしない?しなかった?』
「しねえよ、俺の趣味じゃねえ上に圏外だ」
「えええ!!?夜一さんあんなに可愛いのに!?」
「『……』」
蝶、飯食うか。
なんていう何事も無かったかのような一言に喜助さんに目を向けるのをやめて、にぱっと笑う。
『うん、中也のご飯食べる…♪』
「あれっ、無視?ねえ二人とも…」
「いい子だ、今日はもしかして食欲あるのか?…冷蔵庫の中身的に和食になったけど、嫌いなもんある?」
『中也のご飯に好きなもの以外なんてないよ』
「よーし、じゃあたっぷり食わせてやるよ。座敷だし膝の上で」
ぶわっと恥ずかしさに顔に熱が集まるも、満更でないにも程がありすぎて蝶が舞うのが止まらない。
「…お前ほんと、余計に可愛らしくなったもんだわ……行くぞ、こんな変態放っておこう」
『中也さんに食べさせてもら…ッ』
「あーあー、ショートしてやがる…悪いな浦原さん?俺とあんたとの決定的な違いは守備範囲の差だったらしい」
「!!?な、中原さん?貴方…守備範囲って……どこまでなんです?ちなみに」
「白石蝶であること。以上」
「…うわぁ、それはそれは……ある種究極の変態っていうかなんて言うか…」
____姫ちゃんの一番のタイプじゃない、
なんてどこか少しだけさみしそうに呟いた声が聞こえた。
「へぇ?そうなのか」
『…ご飯』
「分かった分かった…」
